チャレンジ3776メートル登山総合案内-富士登山の注意点
■富士登山の注意点
富士登山の注意点
 標高3776メートル、多くの登山客を魅了する夏山シーズン中の富士山は、登山初心者にも取り組みやすいといわれていますが、決してハイキング気分で登れるような楽な山ではありません。
 日本では空気が一番薄く、下界との気温差も大きい場所になります。また独立峰のため風が強く、上昇気流も発達しやすいため雷も多く発生するなど、気象条件はより過酷です。この要素が富士登山の危険につながっています。
 また、滑落や転倒など遭難事故が毎年後を絶ちません。雄大で美しい景色の一方、思わぬ危険も潜んでいます。
 特に体調がすぐれない時は無理をせず、下山する勇気も必要です。ルールを守って安全第一の登山を心掛け楽しい思い出をつくってください。
●案内所・救護所インフォメーション
5合目総合管理センター 富士山安全指導センター
開設場所 河口湖口5合目ロータリー駐車場そば 開設場所 吉田口・河口湖口6合目登山道と下山道の合流点
開設期間 4月下旬〜11月末 開設期間 7月1日(木)〜9月5日(日)
連 絡 先 0555-72-1477 連 絡 先 0555-24-6223
備 考 7月23日(金)〜8月15日(日)までの金・土・日曜日(計12日間)の8:45〜16:30は、センター内に救急体制を確保します。 備 考 安全登山指導、救急連絡、気象情報の提供、連絡掲示板管理などを行います。
7合目山梨県富士山救護所 8合目富士吉田市救護所
開設場所 吉田口7合目山小屋「鎌岩館」すぐ下 開設場所 吉田口8合目山小屋「太子館」内
開設期間 7月17日(土)〜8月20日(金) 開設期間 7月16日(金)〜8月23日(月)
8月27日(金)〜8月29日(日)
連 絡 先 TEL:0555-24-6223(富士山安全指導センター)または最寄りの吉田口山小屋まで 連 絡 先 TEL:0555-24-6223(富士山安全指導センター)または最寄りの吉田口山小屋まで
富士山総合指導センター 富士山衛生センター
開設場所 富士宮口新5合目レストハウスそば 開設場所 富士宮口8合目池田館下
開設期間 7月1日(木)〜9月30日(木) 開設期間 7月23日(金)〜8月16日(月)
連 絡 先 0544-22-2239(開設期間のみ開通) 連 絡 先 0544-22-2238(開設期間のみ開通)
備 考 事故防止、登山案内、観光案内、臨時派出所 備 考 富士山夏期臨時診療所を設置
●登山前に装備品の確認を
 富士山の天候に対応できる服装をそろえましたか?登山靴は履き慣らしてありますか?体に合ったザックを選びましたか?登山前の装備品チェックはとても重要です。自分のごみを持ち帰るためのビニール袋も忘れずに。
●登山計画書の提出を
 万一のことを考えて(1)単独登山は控える(2)登山計画書は必ず出す−の2点は厳守で。登山計画書には氏名や住所、連絡先、人数などを記入して、富士山安全指導センターや富士吉田署(吉田口の場合)に提出してください。同時に、家族や周囲の人に富士山に登ることを伝えておくことも必要です。
 一方、登山中にもし大きなけがをしたり、遭難したりしたときは捜索・救助活動が必要になります。捜索隊や民間ヘリコプターなどが出動すると非常に高額な費用が発生することもあります。もしもの時のために事前に、登山中の事故や捜索・救助に対応した各種山岳保険に加入することもおすすめします。治療・入院費などを含めた総合的な保険のほか、捜索・救助費用補償専門の保険もあります。
●高山病には要注意
 標高が上がると気圧は低くなります。富士山頂の気圧は平地の6割ほど。この気圧の低さが肺の酸素を取り込む圧力を低下させるため、体内に取り込める酸素の量が減ります。これを受けて現れる症状が「高山病(高度障害、山酔い)」です。主な症状は軽い順に、
 1.心拍数が上がる、呼吸数が上がる、全身の疲労や脱力感
 2.軽い頭痛、眠気、あくび、だるさ、息切れ、食欲不振、睡眠障害
 3.重い頭痛、吐き気
 4.嘔吐(おうと)

となっています。登山中に発症したらとにかく休憩をとりましょう。気分がどうしてもすぐれなければ各登山道にある救護所か山小屋へ避難し適切な対応をとることが大切です。それでも治らない場合は必ず下山してください。
 高山病になるかどうかは実際に登らないと分かりませんが、できる限り高山病にかからないようにするための予防法を紹介します。
登山までに数カ月あるのなら、心肺機能を高める有酸素運動を。1〜2週間後に登山予定なら、体力の温存を。
たっぷり睡眠と、栄養バランスのとれた3食の食事で体調を整えて。持病のある人は事前に必ず医師に相談を。
5合目から登る場合、到着したらすぐに登り始めず、まずは「高所順応」を。トイレを済ませ、軽いストレッチなどをしながら1時間ほど5合目に滞在し、酸素濃度が低い空気に体を慣らしましょう。
全体的にゆっくりとしたペースを保ち、小股ですり足のように登りましょう。特に序盤は意識してスピードを抑えて。息が乱れず、うっすらと汗がにじむ程度が良いペースです。
疲れて呼吸が浅い時、胸式呼吸をしがちな女性は特に腹式呼吸を心がけましょう。息を吐くことに努めると、体は反動で普段以上に空気を吸い込もうと働きます。それでも息苦しいときは、吸い込んだ後2秒ほど呼吸を止めてみてください。掛け声も有効です。
携帯用酸素ボンベによる酸素吸入は、序盤のまだ空気の薄さに体が慣れていないときや、疲労がたまったとき、睡眠の導入時の使用が有効です。
ズボンやザックのベルト類は締めすぎに注意。肩こりは頭痛の原因になり、腹部の過度な締め付けは腹式呼吸を妨げます。気圧低下により、体はふもとにいる時より膨張するので標高に合わせ調節しましょう。荷物の中身の片寄りも体に悪影響を与えるので、登山者のじゃまにならない場所で直しましょう。
水分をこまめに少量ずつとりましょう。標高の上昇や発汗によって水分不足となった体は、高山病にかかりやすくなります。摂取目安は1日最低2リットル。食事でのお茶やみそ汁なども有効です。エアコンの効いた5合目までの車の中、休養時や睡眠中の発汗でも脱水が進行することをお忘れなく。
●気温差を考慮。低体温症・熱中症にも要注意
 標高が100メートル上がるごとに気温は0.6度下がるといわれています。甲府が明け方気温25度の熱帯夜でも、山頂は5度ぐらいという真冬の寒さ。さらに雨や風も体感温度を下げます。
 昨年、北海道の大雪山系で起きた遭難事故は、夏山にもかかわらず低体温症によるものでした。低体温症とは、寒さや雨などで体の熱が奪われて起こる全身的な障害で、体温が34〜33度以下になると、体温を上げるために体が震えるなどの対寒反応が消え、錯乱や意識消失、不整脈などの症状が出ます。30度以下になると死亡(凍死)例が多くなります。
 富士山は6合目以上になると、風雨をよける場所が山小屋などごく限られた場所だけになります。山の風雨は下界とは比べものになりません。まずは登山前に気象情報を入手し、荒天が予想される場合は登山を中止することが大事です。登山中に荒天に遭遇した場合は、迷わず避難しましょう。ぬれた衣服はすばやく着替え、体温の低下を防ぎましょう。
 逆に、好天の場合は直射日光がまともにあたります。そのような中での登山は体温の上昇を招き、熱中症にかかる危険性があります。症状としては疲労感やだるさ、めまい、動悸、頭痛などがまずあらわれます。帽子などをかぶり強い日差しを避け、こまめに休憩や水分を取るのが予防策です。
 いずれの場合も、症状がでたら救護所などに避難し、適切な対応をとることが大切です。
●雷
 夏山の危険のひとつです。事前に特性を知っておくと、冷静に対処できます。
 登山用語「早立ち早着き」は、早朝の出発・午後早くの山小屋着で午後に多く発生する雷を避けることを、「カミナリ3日」といういわれは、雷が数日連続して発生することを意味しています。登山前の数日間、山小屋などから気象情報を入手し、できるだけ雷に遭遇する危険の少ない登山計画を立てましょう。
 また、雷は下界と上空の気温差が大きいほど発生の確率が高くなります。静岡・御前崎と富士山頂の気温差が25度を超えたときは要注意です。
 登山中に積乱雲や夕立の予兆などから雷の危険に気づいたらできるだけ早く山小屋などに避難を。万一遭遇し避難場所がない場合は、できるだけ姿勢を低くして通り過ぎるのを待ちましょう。
●強風・突風
 富士山における滑落事故や転倒事故の原因のひとつに強風・突風があります。富士山の風の強さは、最大瞬間風速91.0メートル、最大風速72.5メートル(いずれも日本国内で記録された最大記録)と並みではありません。1973年から2000年の平均でみても、最大風速20メートルを超す台風並みの日が年間121.0日、10メートル以上も313.4日あり、風速がひと桁の日は、わずか50日程度。最も小さい8月でも平均風速7.3メートル、7月は8.5メートルあります。また、独立峰であるため風向きが常に変化する、吹き方にも強弱があるのが富士山の風の特徴です。おまけに風をさえぎる樹木などもない6合目以上では、生身を強風にさらすことになります。
 この風のため登山者はバランスを崩しやすく、実際、強い向かい風に前かがみに進んでいて、突如風が止みそのまま前のめりに滑落・転倒するケースもあります。たとえ晴天でも突然の風に十分注意し、強風下の登山は中止、避難が必要です。
●落石
 1980年の大落石事故をはじめ、富士山は落石が多い場所です。強風が原因の例もありますが、頻繁なのは人為的なものです。登下山道のジグザグの先端などで人が不用意に落とす場合が多いのです。落とした本人に自覚はなくても、当たった人は大けがになるかもしれません。石を落とさない歩き方を心がけましょう。また、登下山道以外の場所は絶対に立ち入らないことが大切です。
 また、山開き直後の富士山は地面が踏み固められていないため浮き石が多く、ねんざなどけがをしやすいことをご存じですか。一歩一歩足元を確認しながら進むことが必要です。
登山総合案内トップページへ

All rights reserved by YAMANASHI NICHINICHI Newspaper and YBS Yamanashi Broadcasting System.
富士山NETに掲載の記事・写真および図版の無断転載を禁じます。