「富士山」の世界文化遺産登録を目指す山梨、静岡両県は、富士山が古くから「信仰の対象」「芸術の源泉」となってきた名山として価値が高い、と強調してきた。これを受け、政府も信仰、芸術両面から価値を説明した推薦書を1月中に国連教育科学文化機関(ユネスコ)に提出する方針だ。
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| 世界文化遺産への登録を目指す富士山=山日YBSヘリ「ニュースカイ」(NEWSKY)から空爆 |
政府が提出した推薦書は国際記念物遺跡会議(ICOMOS)が内容を審査する。推薦書には富士山の価値を証明する上での“証拠”に当たる構成資産として、富士山域や山麓に点在する浅間神社、代表的な富士山の眺望地点である三保松原など山梨、静岡両県合わせて25件を列挙する予定だ。ICOMOSは構成資産が富士山の価値証明をする上で適切かどうかを見ながら、文化遺産としての価値があるかを判断する。
審査の過程では、海外の専門家による現地調査も行われる。専門家が構成資産などを見て回り、保存管理の状況などを調査する。2011年に世界文化遺産に登録された岩手県の「平泉」の例では、専門家1人が現地を訪れ構成資産の保存管理状況について県の担当者から聞き取り調査を行ったほか、遺産の価値を訪れた人たちに伝える取り組みなど多岐にわたって確認していったという。
一方、山梨県は12年から語呂合わせで2月23日を「富士山の日」とすることを決定。既に同日を「富士山の日」としている静岡県とも連携し、富士山の世界文化遺産登録実現に向けた活動を一層加速させる。登録実現を目指す上で、「国民が登録を切望しているという機運も重要」(山梨県世界遺産推進課)との考え方から、啓発活動なども本格化させる意向だ。
「13年の登録」実現へ正念場 ICOMOSの勧告がポイント
ICOMOSで「富士山」の世界文化遺産登録審査が行われる2012年は、山梨、静岡両県が目指す「13年登録」を実現する上で正念場の年となる。富士山が世界文化遺産となるためには、ICOMOSの登録勧告を勝ち取ることが重要で、現地調査を含む今年の審査がその判断を左右することになるからだ。
世界文化遺産登録について最終判断をするのはユネスコの世界遺産委員会。だが判断の際、諮問機関ICOMOSが出す登録の可否についての勧告が参考にされる。07年に文化遺産となった「石見銀山遺跡」(島根県)のように、ICOMOSが「登録延期」を勧告したにもかかわらず、世界遺産委員会で登録が認められる“ねじれ現象”もあるが、「ICOMOSから登録勧告を得るのが基本」(県世界遺産推進課)という。
ICOMOSが富士山について、どのような勧告をするかは、主に今年行われる審査が影響するとみられる。近年の審査をみると、11年に文化遺産登録が実現した「平泉」(岩手県)に対しては「価値として挙げた浄土思想と構成資産との関係が薄い」と指摘。「登録延期」が勧告され、最終的に登録実現には3年を要した。政府は2月1日までに富士山に関する推薦書を提出する予定だが、列挙した構成資産と、価値として挙げた「信仰の対象」「芸術の源泉」との関連性は慎重に審査されそうだ。
また保存管理の状況などは現地を訪れる専門家が審査する。富士山の構成資産はさまざまな法令で保護措置がとられているが、実効性を発揮しているとの評価が得られるかどうかがポイントの一つとなる見込み。また富士山の価値を後世に伝えるような施設が山梨、静岡両県にはまだないため、対応を急ぐ必要もありそうだ。 |