山頂にかかる雲(下)

山頂にかかる雲(下)
 富士山は、南アルプスのように山々が連なっているのと違い、単独でそびえている。まるで誰かが造ったかのような均整のとれた円すい型の山体。すそのを優美に広げる姿は日本一の山にふさわしい堂々としたものだ。もっとも、あまりに美しすぎ、たとえば青空を背にポツンとそびえていると、迫力はあるが何か物足りなさも感じる。

 しかし、うまくしたもので、富士山は独立した山ゆえに山体にぶつかる風が乱され、いろいろな形の雲ができる。発生の仕組みは前回紹介したが、現れては消えるさまざまな雲が、単純な富士山の風景に彩りを加えてくれる。

 富士山の雲で、特に目を引くのが笠雲と吊し雲。山頂にかぶさったり、少し離れて出る笠雲。風下側に離れて出るレンズ状の吊し雲。どちらも現れる形は多彩で、笠雲には「ひとつ笠」「にかい笠」「かいまき笠」「はなれ笠」、吊し雲には「だえん」「つばさ」「はち」などとユニークな名前が付けられている。

 ふもとの住民は、こうした雲を天気を占うことにも利用している。「富士山が笠をかぶれば近いうちに雨」。こうした雲と天気にかかわることわざは地元にたくさん残っている。多くは笠雲、吊し雲と雨にかかわるものだが、河口湖測候所が20年間(1933年から52年)にわたって富士山の雲を観測し、形を分類し天気との関係をまとめている。

 その結果では、笠雲の出現率は単純な月平均で6.1回、吊し雲は2.0回で笠雲のほうがよく現れている。気になる雨とのかかわりは、現れてから24時間以内に雨が降った割合は、笠雲が72%、吊し雲が82%と、それぞれ高い確率で雨となっている。地元の言い伝えは、確かに当たっているわけだ。

 もっとも、表に示したように、笠雲でも現れる形や時期によって、雨や風を告げるだけでなく、晴れを告げるケースもあるようだ。 

山梨日日新聞社 YBS山梨放送
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