【富士山防災 噴火に備える】 火山意識した暮らしを

【富士山防災 噴火に備える】 火山意識した暮らしを
■静岡大防災総合センター副センター長 小山真人教授に聞く

 1707年の「宝永の噴火」以降、300年以上にわたって“沈黙”を続ける富士山。いつか必ず来ると言われる「その時」に、どう備えるか。富士山火山防災対策協議会委員で、静岡大防災総合センター副センター長の小山真人教授(火山学)に聞いた。

 【写真】小山真人(こやま・まさと)さん 静岡大教育学部教授。伊豆半島ジオパーク推進協議会顧問、火山噴火予知連絡会伊豆部会委員、伊豆東部火山群防災協議会委員などを務める。富士山ハザードマップ検討委員会委員なども歴任した。56歳。

 −各地で火山活動が活発化している。富士山の状況は。
 「観測データを見ている限り、富士山に特段の異常はない。火山活動の活発化は、それぞれの山の動きであって、連動性があるものではない。ただ、富士山はいつ噴火してもおかしくないとの認識は持つべきだ。仮にいま地下深くで噴火に関わる動きが進んでいても、観測網に引っかからなければ、われわれ専門家も察知できない。備えは常に必要だ」

 −富士山が持つ火山の特性は。
 「(爆発的な噴火で江戸まで火山灰が積もった)宝永噴火のようなケースは、特例的で非常に珍しい。圧倒的に多いのは小規模な噴火。おとなしい火山で、あまり乱暴なことはしない。ただ、小規模な噴火でも登山者は大きな被害を受けるため、特別な配慮が必要だ」

 −御嶽山のような突発的な噴火に備え、山梨県は「避難ルートマップ」を作製した。
 「富士山の火山防災は住民避難が先行してきたが、登山者対策が進みだしたことは評価できる。マップは過去の資料を参考に、噴火ケースごとに登山者がどう逃げればいいか示したが、調査の事情で最もリスクの大きい吉田口登山道7、8合目付近で繰り返されてきた噴火が想定されていない。県は完成途上のマップであることを積極的に周知するとともに、応急的な措置を講ずるべきだ」

 −応急的な措置とは。
 「登山者に噴火のイメージを持ってもらうことだ。7、8合目付近の登山者だけが被害に遭う小規模噴火の例があることを想定し、もし遭遇した場合は噴火口の下流から遠ざかることを心がける。そんな判断ができるよう、登る前に5合目で火山防災に関する基礎知識をレクチャーする機会を設けるべきだ」

 −富士登山の際の心構えは。
 「噴火災害は天候の急変で遭難したり、落石や雷に打たれたりといった、登山によって高まるリスクの一つ。山登りは危険に近づく行為であることを、登山者一人一人が認識してほしい。その意識を持てば、特別な心構えと装備が必要と理解できるはずだ。富士山には浮き石も多く、登山者が落石を起こしたりする。私は登るとき、必ずヘルメットを携行する」

 −住民は火山とどう向き合えばいいのか。
 「火山には危険だけでなく、『恵み』があることを知ってほしい。噴火を重ねた末にできた富士山の美しい山容をはじめ、北麓にある富士五湖や忍野八海などの湧水もそうだ。その恵みの中に身を置いている、暮らしているという意識を持ってほしい。噴火すれば避難し、終息すれば再び集って生活を送る。先祖はそうやって富士山と付き合ってきた。火山を意識した暮らしが、噴火への備えの基盤となる」〈聞き手・小沢甲吾〉
(おわり)

山梨日日新聞社 YBS山梨放送
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