縮小する富士山の永久凍土

縮小する富士山の永久凍土
 永久凍土とは、少なくとも2年間以上継続して凍結している地盤をいう。シベリアやアラスカなどに広がり、日本では富士山や北海道・大雪山などで確認されている。地球が現在より寒冷だった氷河期に形成、発達したとみられ、厚さは数メートルから数十メートルが普通。中には数百メートルのものもある。陸地の約2割を占めるが、地球温暖化による減少が報告されている。

 2002年10月、山形市で開催された日本雪氷学会において、富士山南斜面(静岡県側)では、1976年夏の地温観測により3200メートル付近と推定されていた永久凍土の下限が、2000年8月から1年間行われた国立極地研究所(極地研)や静岡大、筑波大による初の地中温度連続観測で、約25年の間に標高差で約300メートルも山頂側に後退したことが発表された。

 2010年1月、コケ類以外は繁殖が困難とされる富士山頂で永久凍土の減少が進み、約20年前には確認されなかったイネ科などの植物も生育していることが、静岡大の増沢武弘教授(植物生態学)らの調査で分かった。

 増沢教授によると、調査は2009年8月下旬に実施。1998年に永久凍土が確認された山頂付近、標高3700メートル以上の約100地点で深さ30〜70センチの穴を開け、温度センサーで計測。より深い場所の温度を推定するなどした結果、凍土が確認できない地点が複数あった。

 富士山南側斜面の凍土の下限は、2009年はさらに上昇し、山頂付近でも部分的に消失しているとみられるという。

 山頂で調べた結果、約20年前の別の調査ではみられなかった種子植物のタカネノガリヤス(イネ科)やイワツメクサ(ナデシコ科)が確認された。通常は標高2500メートル付近に分布している植物という。

 山頂は栄養分や水分が乏しい火山性土壌の上、低温や強風、紫外線にさらされるため、生育しているものの多くはハイイロキゴケなどの地衣類やコケ類で、種子で繁殖する植物(種子植物)の定着は困難とされていた。

 2010年8月には、富士山頂の永久凍土の実態を調べるため、信州大山岳科学総合研究所(長野県松本市)の池田敦研究員らのチームが、山頂で深さ約10メートルの穴を掘り、地中温度の直接観測に取り組む。池田研究員によると、永久凍土は通年で地中の温度(地温)が0度以下。計画では、山頂の1、2カ所で直径約5センチ、深さ約10メートルの穴を掘削しセンサーを複数設置、通年で地温を計測する。

 一方、科学者らでつくるNPO法人「富士山測候所を活用する会」は、2007年から旧富士山測候所(現富士山特別地域気象観測所)を活用し、永久凍土や高所医学、放射線科学など富士山の環境を生かした研究を行っている。



 永久凍土の分布域は、冬季の凍結と夏季の融解のバランスで決まるといわれ、1976年から1998年の間に富士山頂の年平均気温は0.8度、最高気温の平均も2.5度それぞれ上昇していた。分布域の縮小は冬の気温の上昇が関係しているとみられている。実際、月別では8月の平均気温は約0.2度の上昇に止まったが、1月は約3度、2月に約1度も上昇していて、冬季に凍らせる能力が低下したことが後退につながったとみられている。また、永久凍土は気温の変化を非常に受けやすいと推定され、凍土が融解すると温室効果ガスのメタンガスが大量に放出されて温暖化を加速するという。

山梨日日新聞社 YBS山梨放送
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