1974(昭和49年)4月10日付

1974(昭和49年)4月10日付
『「富士山頂は神社のもの」 宗教活動に必要 1、2審判決支持 17年ぶりに決着 最高裁判決』

 富士山8合目以上の土地は国のものか、それとも富士山本宮浅間神社のものか−。日本のシンボル、富士山の所有権をめぐって17年間も争われてきた行政訴訟で、最高裁第3小法廷は9日、神社側を勝訴とした1、2審判決を支持し、国側の上告を棄却する判決を言い渡した。

 判決は「いわゆる神体山として信仰の対象とされている山岳などは、宗教活動に必要なものに当たる」と述べ、神社側の主張をほぼ認めた形で決着をつけた。2審判決は気象庁の山頂観測所など国の必要な土地は除外しており、“立ちのき”の必要はない。

 この裁判のきっかけは、富士山本宮浅間神社(静岡県富士宮市宮町)が昭和23年「社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律」(法律53号)に基づいて、富士山8合目以上の土地404万5800余平方メートルを譲るよう大蔵省に申請したことだった。

 新憲法が“政教分離”を打ち出し、神社、寺へ国有地を無償貸し付けできなくなったことから、この法律は宗教活動に不可欠な土地の譲与を定めたもの。 ところが浅間神社の申請に対し「公益上、富士山頂は国有地とすべきで、神社には奥宮社殿の敷地など16万4800余平方メートルだけ譲与する」という行政処分を決めたため、同神社側は昭和32年に同省の出先の東海財務局を相手に「国有境内地譲与申請不許可処分取り消し請求」の訴訟を起こした。

 裁判で同神社側は「山頂は富士信仰の対象で、そのご神体を失っては宗教活動ができない」と主張したが、国側は(1)富士山は日本国土のシンボルであり、国民感情からも私有化は許せない(2)厚生省、電電公社などの施設の拡充、整備上必要がある−などと反論し、山頂の土地の「宗教活動上の必要」「国有とする公益上の必要」の有無が争われた。

 1審の名古屋地裁は昭和37年「神社にとってご神体の8合目以上は宗教活動に必要」として同神社側の主張を認め、さらに2審の名古屋高裁も昭和42年、公益上国有化とすべき土地を1審判決より増やした形で同神社側を勝訴とした。

 この日の最高裁判決は「山頂の土地は明治初年に無償で取り上げたもので、法律53号にいう譲与は旧所有権の返還の性格を持つ」と判断したうえで「一般的に神体山などは、当該神社等の宗教教義、宗風、伝統、慣習等に照らし、宗教目的に必要な土地に当たる」と述べ、2審判決を支持した。また、国側が国有とすべき理由として挙げた国民感情や、まだ具体的計画がない文化、観光など公共の必要性−などについても、国の主張を退けた。【当時の紙面から】

山梨日日新聞社 YBS山梨放送
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