1970(昭和45)年7月30日付

1970(昭和45)年7月30日付
『富士山はすばらしい ヒラリーさん、早足登山』

 「立山もきたなかったが富士山もよごれている」と29日、富士登山をしたエベレスト初登頂者エドモンド・ヒラリーさん(51)は山に登りながら話していた。また「富士山は登るのは簡単だが大勢登山者がいるので登りにくい」と冗談もとばしていた。

 28日夜、南都留郡勝山村の富士ビュー・ホテルにルイズ夫人(39)と一泊したヒラリーさんは29日朝8時前に同ホテルを出発した。この春、エベレストに登り6月20日に帰国した神崎忠男さん(30)=東京都=ら14人のパーティー。自動車で富士山有料道を登り、吉田口から頂上を目ざした。

 ヒラリーさんは十三文という紺のズック、薄青の半ズボン、茶色のシャツ、経木の帽子に旅行カバンという姿、夫人もショートズボンに赤のブラウス、麦わら帽子という軽装。

 世界的な登山家のヒラリーさんは大またで5、6合目あたりは平地を歩くように登る。夫人はちょっと遅れたが、7合目の花小屋下では「コイコイ」と覚えたばかりの日本語で夫人に呼びかけるなど、一緒に登っている人たちを笑わせた。

 この日は朝のうちは快晴だったが10時ごろから6合目付近はガスが出て時折りながめをさえぎった。ガスがわくとそのたびに「美しい雲」などと指してヒラリーさんは上気げんだった。しかし一般の富士山登山者はこの2メートルもある大男が世界的な登山家と知らず「変な登山者」と首をかしげていた。

 ヒラリーさんは富士山の印象について「立山も大勢登山者がいたが富士山も多い。これじゃあ登るのに苦労する。人をよけるのが山に登るよりたいへんだ。ゴミも多い。馬で登る人もいるが楽しければそれもよいだろう。ながめはヒマラヤに似ている。遠い山が美しい。エベレストは上り、下りがきつかったが、富士山も登るのがきつい」と話していた。

 夫人も早足のヒラリーさんに負けず登っていたが「富士山は楽しい」とお世辞を振りまき、「溶岩で登りにくいが景色がよい」と印象を語っていた。夫人は「町に住んでいるので山には登らない。夏にハイキングをする程度」といい、頂上近くになると3000メートルを越す富士山の空気を「おいしい」と盛んにほめていた。

 ヒラリーさんらは午後、山頂に着いたが、午後4時過ぎ吉田大沢を下り、富士山有料道を通って同夜は箱根に泊まった。【当時の紙面から】

山梨日日新聞社 YBS山梨放送
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