「五百円札」の端正な富士

「五百円札」の端正な富士

 山梨県大月市の北辺に位置する雁ガ腹摺山(標高1874メートル)。この山は真木川、小金沢・葛野川の水源地でもあり、どっしりとした美しい姿が特徴的。

 現在は山梨百名山の一つにも数えられ、多くの登山者が訪れている。しかし、大菩薩南嶺主脈のやや東に当たり、メーンルートからは外れている。そのため、かつては不遇の時期をかこっていた。

 雁ガ腹摺山が、一転して有名になったのが1951年。新たに発行された五百円札の裏側に、9合目あたりまで雪をかぶった端正な姿を誇る富士山が描かれていた。その「五百円札の富士山」の原画となる写真の撮影場所が雁ガ腹摺山だった。

 大月市と富士山は直線距離で30数キロと、決して近い距離ではなく、大月市民ですらあまりこの絶景ポイントを知らなかったという。それだけに、五百円札発行で”穴場”だった雁ガ腹摺山は一躍”メジャー”に躍り出た。

 五百円札に富士山が描かれることは、富士山が日本のシンボルであることを県民にあらためて印象づけた。

 1982年、雁ガ腹摺山は再びスポットライトを浴びた。新たに導入された五百円硬貨の登場で、「消えゆく五百円札の富士山」を写真に収めようと、大勢の登山者が訪れた。

 山頂は南面が開け、しかもカヤトの原から一段高くなっていて、遮るものなく富士山が眺められる。前景に三ツ峠山と滝子山を置き、東西に長く裾を引く姿は、最も美しい富士山の一つかもしれない。

山梨日日新聞社 YBS山梨放送
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