【富士山防災 どう備えるか】 登山者の対応は

【富士山防災 どう備えるか】 登山者の対応は


■火口から2キロは退避

 登山中、目の前で噴火が起きたら−。御嶽山の噴火災害以降、富士山では突発的な噴火を想定した登山者対策が加速した。観測態勢や登山者への情報伝達方法が見直され、受け入れる地元の観光業者の意識も変わりつつあるという。そんな中、登山者に求められる意識や行動とは何だろう?

 県富士山科学研究所の吉本充宏主任研究員(45)によると、富士山はマグマが地表近くに上がり始めた時に、地震や地殻変動などある程度の兆候がつかめる可能性が高い。ただ、マグマは粘り気が少ない玄武岩質で上昇が速く、兆候をつかんでから噴火まで数時間しかないことが考えられるという。

 伊豆大島の噴火(1986年)でたとえると、その時間は3時間。富士山頂にいたら麓に下山する前に噴火していることになる。

◎事前準備

 吉本主任研究員は「噴火は止められないが、被害を軽減することはできる」と言う。最も重要なのは、火山に対する知識を持つこと。噴火とは、噴火から身を守るには−。知っていればすぐに行動に移せて、逃げ遅れる恐れは低くなるという。

 まず、登る前に富士山が活火山であることを意識し、気象庁のホームページ(HP)などで「噴火警戒レベル」や「火山解説情報」を確認しよう。「避難ルートマップ」も山梨県のHPからダウンロードするなどして手に入れたい。

 避難ルートマップは、四つの噴火パターンに応じ、登山者らの避難の方向や経路を示したものだが、「注意点は、必ずしもその通りに起きるとは限らないこと」と吉本主任研究員。噴火の規模や火口位置は予測ができず、4パターン以外の噴火も十分に起こり得る。「マップを見て、どう対処ができるかは力量が問われる。読みこなす訓練が必要だ」という。

 富士山は、割れ目火口の長さが1キロ以上に及ぶこともある。溶岩流や火砕流は下方向に流れるため、山頂と火口位置をマップ上で直線で結び、その延長線をまたがずに、できる限り離れられる方向に逃げるといいという。

◎防災教育

 登る時は、登山届を提出し、噴石や降灰に備えて、ヘルメットを着用。ゴーグルやマスクも携行する。噴火を即時に伝える気象庁の「噴火速報」を受け取るために、スマートフォンやラジオがあると便利だ。県もアプリを通じて防災情報を知らせるシステムを運用しているので活用したい。

 いざ目の前で噴火が起きたら−。まず、噴石から身を守るためにとにかく火口から離れる。2キロ地点まで離れられれば、大きな噴石が飛んでくる確率は激減するという。リュックサックで頭や体を防護して、大きな岩の陰などに退避。近くに山小屋があれば、できるだけ下の階や梁の下など構造上強いところに身を寄せたい。

 火山ガスや火山灰を吸い込まないようタオルなどで口元を覆うことも必要だ。噴石が収まったら、できるだけ火山情報を集めて、下山するかその場にとどまるか、次の行動を判断しよう。

 火山は噴火の脅威だけでなく、美しい景観や湧水、豊かな植生などの恵みをもたらす。富士山にも、その恩恵を求め多くの登山者や観光客が訪れる。吉本主任研究員は「噴火災害を知った上で登山を楽しむために、周辺住民はもちろん、全国的に小さい頃からの防災教育を進めていく必要がある」と話している。

山梨日日新聞社 YBS山梨放送
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