三島由紀夫の書簡初公開
きょうから山中湖の文学館
「潮騒」執筆時の取材で謝辞

更新日:2018年05月15日(火)

 作家三島由紀夫(1925〜70年)の長編小説「潮騒」ゆかりの書簡3通が15日から、山中湖・三島由紀夫文学館(佐藤秀明館長)で公開される。同作執筆のために取材した家族に送った未発表の書簡で、佐藤館長は「丹念な取材を基に作品を書くことを三島が覚え、芸域が広がったことを象徴する貴重な資料」と指摘している。

 「潮騒」は1954年刊行で、漁師の新治と海女の初江の純愛を描いた長編小説。ベストセラーとなり、同年の「第1回新潮社文学賞」を受賞。吉永小百合さんらの主演で過去5回映画化され、現在でも青春文学の代表として幅広い年齢層から人気を集めている。

 物語の舞台「歌島」は三重県鳥羽市神島をモデルとし、三島は2回、この島で取材をしている。3通の書簡は、いずれも神島灯台の山下四郎・元灯台長らに送られたもので、神島滞在の思い出や取材協力への感謝などがユーモアを交えながら書かれている。献本の書状では、四郎氏の妻や娘が登場人物のモデルになったことが暗に語られている。

 佐藤館長の依頼を受け、四郎氏の息子山下悦夫さん(87)=奈良市、娘竹林文代さん(83)=浜松市=が書簡や写真などを提供。14日に来館して展示を鑑賞した。

 佐藤館長は「『潮騒』はこれまで、古代ギリシャの物語『ダフネスとクロエ』を基にした創作とされてきたが、書簡からは、親密な関係を築いた神島の人々との出会いが制作に深く影響したことがうかがえる」と話している。

 書簡の公開は、特集展示「『潮騒』の人々」の一環。三島から山下家に贈られたオルゴールなど約40点が並ぶ。10月14日まで。問い合わせは三島由紀夫文学館、電話0555(20)2655。

三島由紀夫が三重県鳥羽市神島の元灯台長に宛てた書簡(1953年)=山中湖・三島由紀夫文学館
三島由紀夫が三重県鳥羽市神島の元灯台長に宛てた書簡(1953年)=山中湖・三島由紀夫文学館
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