富士山とトイレ

富士山とトイレ
 富士山のトイレは、厳しい自然条件から通常の浄化槽設置や処理水確保が困難で、以前は山小屋のトイレの多くは、便そうにし尿をため夏山シーズンが終わった後、流して捨てていた。放流式といわれるが事実上、たれ流しで地下水への悪影響や水に溶けないティッシュペーパーが山肌にこびりついて、いわゆる「白い川」現象が起き景観を損ねる問題も指摘されていた。そのため国、山梨・静岡両県など行政、環境NPO(民間非営利団体)がバイオトイレ設置やトイレのチップ制導入などを進めた。

 環境省が1999年7月、山梨県側の吉田口下山道7合目に燃焼式、静岡県側の富士宮口登下山道5合目に水循環式のし尿を外に出さないトイレを設けた。2001年には山頂に実証実験用トイレ、バイオコンポスト式と水循環式の2種類を設置した。いずれもチップ制。また、環境配慮型トイレの整備は、2002年度に国の補助に県が上乗せする形で助成する制度を始めてから本格的に進んだ。

 その結果、富士山の吉田口登山道の山小屋で、山梨県と山小屋経営者などが進めていた環境配慮型トイレの整備が2006年度で完了した。静岡県側は2005年度までに全山小屋で整備を終えており、富士山の山小屋と公衆トイレのすべてが環境配慮型となった。

 また、旧山梨県営五合目総合管理センターのトイレは、2012年に県と県道路公社が改修。オゾン浄化循環式汚水処理システムを採用、1日当たり約1万5000人の処理能力があり、山岳トイレとしては国内最大規模。

 さらに、吉田口下山道の7合目公衆トイレを2016年にリニューアル=写真。便器の数は2倍の10基に。効率的な処理をするため「し尿分離式」を導入。便は微生物などによって分解し、尿はタンクにためて麓に下ろして処理する。1日当たり3300人分の処理が可能で、機能としては従来の約3倍に当たる。

 一方で、富士山の環境保全はまず利用する人、登山する人の意識の高まりが大切。山小屋にとっては維持管理の負担がかさむという問題もあり、いかに利用者に費用負担の協力を得て運営していくかが課題となっている。トイレ利用は基本的にチップ制をしいているので協力するなど、「富士山のトイレ事情」に少しでも留意して登山を楽しみたい。

山梨日日新聞社 YBS山梨放送
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