2016.5.16

よみがえれ、車窓の花畑 都留 富士急沿線、育てた住民の遺志継ぐ 風物詩、運転士ら手入れ

シバザクラの畑で草むしりをする富士急行の運転士や車掌ら

 都留市つる4丁目にある富士急行線沿いの畑で、運転士や車掌ら富士急行の社員が、名物となっていたシバザクラの手入れを始めた。毎年シバザクラを育てていた同所の奥脇潔さんが2年前に85歳で他界。引き継いだ妻梅子さん(78)も高齢のため、昨年夏以降は畑の手入れを断念し、雑草が伸びて荒れ地となっていた。毎年4~5月はシバザクラ目当ての乗客もいて、電車が畑近くに差し掛かると、速度を落とす気遣いをしてきた運転士たち。「美しい景色を届けてくれた夫婦に恩返しがしたい」と、沿線の風物詩として復活する日を目指して作業を続ける。
 11日午後1時ごろ、都留市-赤坂駅間の畑に富士急行の運転士や車掌らが集まった。約700平方メートルの畑は雑草が生い茂り、かれんな花が広がる昨年までの面影はない。勤務時間後や休日を利用して集まった社員たちは、雑草をむしったり肥料を与えたりし、夕方まで作業を続けた。
 シバザクラは潔さんが2004年に栽培を始めた。5年ほど前には白とピンク色の花をハート形にデザイン。4月下旬から5月末の見頃を迎えると、鮮やかなコントラストを描き、春の風物詩として乗客を楽しませていた。
 梅子さんによると、潔さんは生前、冬場以外は毎日のように畑に出向き、手入れを怠らなかったという。潔さんは14年10月に心筋梗塞で他界。梅子さんは「夫に代わりシバザクラを育て続けたい」と手入れを続けたが、体調を気遣う家族の助言を受け、昨年夏以降は畑の手入れをやめた。
 「夫はシバザクラを育てるのが生きがいで、多くの人が喜んでくれるからと、毎日張り切っていた」と梅子さん。「思いを引き継いでみたけど、手入れは本当に大変な作業。家族に無理はしないでと言われ、諦めた」と残念そうな表情を浮かべた。
 シバザクラ復活を目指す作業は、富士急行の運転士菊嶋仁さん(48)らの呼び掛けで3月下旬に始まった。運転士や車掌、駅員が畑の手入れに参加。ほぼ毎日3~6人が除草やシバザクラの植え替えなどの作業をしている。ツクシなどの雑草が生えたため、シバザクラの勢力を回復させるのが難しく、少しずつ作業を続けて5年後の完全復活を目指すという。
 4月11日の作業に参加した運転士の渡辺清美さん(53)は「乗客からは『シバザクラがきれい』との声が絶えず、本当に評判が良かった。奥脇さんの努力があったからこそ」と話す。作業を呼び掛けた菊嶋さんは「運転席から奥脇さんが畑で作業している姿をよく見掛け、そのたびに自分も仕事をがんばろうという気持ちになった。どうにか復活させたい」と語った。
 梅子さんは「夫が愛情を込めたシバザクラを守り育ててくれるのは本当にうれしい」と復活の日を心待ちにしている。

富士急行線の車窓を楽しませた、ハート形の白とピンクが鮮やかなシバザクラ(2015年4月)=いずれも都留市つる4丁目

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