2018.2.23

「富士山の日」発信拠点を取材  

昨年12月に開館した静岡県富士山世界遺産センター。静岡県産の富士ヒノキでつくられた木格子の逆さ富士が水盤に映る=静岡県富士宮市

 富士山が世界文化遺産に登録されてから今夏で5年を迎える。山梨、静岡両県で、霊峰の魅力や遺産登録の意義を伝えているのが「世界遺産センター」だ。2月23日の「富士山の日」に合わせ、山梨日日新聞、静岡新聞の記者がセンターを相互訪問。その「実体」を取材した。
静岡の「世界遺産センター」海抜ゼロ登山疑似体験
 建物正面の水盤に映る姿は霊峰そのもの。「逆さ富士」を模した施設の外観は、想像以上のインパクトだった。
 設計したのは、建築界のノーベル賞と呼ばれる米プリツカー賞を受賞した建築家坂茂氏。外壁は静岡側の富士山麓で育ったヒノキを格子状に組み、隣接する富士山本宮浅間大社との調和を生み出している。鳥居と、その向こうに高くそびえている本物の富士山と。計算された景の美しさに、しばし見入った。
 展示棟に入り、らせん状の緩やかなスロープを上っていく。屋外テラスのある5階まで193メートル。内壁のスクリーンには海辺から樹林帯、山頂に至る「登山道」の景色が次々と投影される。静岡ならではの「海抜ゼロメートルからの登山」を満喫した。
 最上階に着き、屋外テラスに歩みを進めると視界が一気に開け、雄大な富士山が飛び込んできた。富士宮の市街を従えた、その存在の大きさにあらためて圧倒される。
 各階には「育む山」「受け継ぐ山」などテーマを設定した常設展示がある。「美しき山」のコーナーでは、富士山を題材にした浮世絵や日本画、工芸品など約150点をタッチパネル式の画面で鑑賞できる。ズームアップしても美しさはそのまま。「高画質で撮影しているので、鮮明さは失われません」。落合徹副館長がデジタル資料のメリットを教えてくれる。
 「荒ぶる山」の部屋では、直径1メートルほどのデジタル地球儀が目を引いた。指先で操作し、環太平洋火山帯に属している富士山の位置づけが分かった。「聖なる山」のコーナーにもタッチパネル画面があり、噴火口を囲む八つの峰に9体の仏が宿るとされた山頂の世界観を紹介している。
 ビジュアル重視の施設かと思いきや、実物に触れる機会も用意していくという。別棟の企画展示室では歴史、美術、文学、考古学、文化人類学の学芸員が持ち回りで展示を企画する。「デジタルと実物、両方の資料に触れ、富士山を体感してほしい」と落合副館長。センターは昨年12月23日の開館後、1カ月で6万人を超す人が訪れたという。人気の高さに驚く。
 スロープを上りながら「富士登山」を体験した後、世界文化遺産に登録された理由を展示で学ぶ。資料の多くは、一目見れば分かるよう視覚的な工夫が施されている。来館者に富士山の本当の姿、価値を知ってもらい、守り継いでいく一人になってほしい-。センターに関わる静岡側の人たちの願いを体感する時間に、山梨県側との連携強化は不可欠との思いを強くした。(山梨日日新聞取材)

逆円すいの内部が展示スペースになっている。中央の柱には拡大した参詣曼荼羅が掲げられている=静岡県富士宮市

実物大の曼荼羅とデジタル資料(左)を見比べながら解説する落合徹副館長=静岡県富士宮市

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