2019.5.22
富士山「承認」 環境保全へ「努力続ける」

富士山吉田口登山道の7合目付近で列をつくる登山者。政府がユネスコに提出した報告書では、登山者による混雑を緩和する取り組みを進める方針を示している(2018年7月)
「多くの人が携わり完成した報告書で、諮問機関に評価されたことは喜ばしい」。富士河口湖町の渡辺喜久男町長は意見の内容を聞き、笑顔を見せた。「報告した内容を順守していくために、地元自治体として協力していきたい」と話した。
富士山吉田口旅館組合組合長の中村修さん(70)は「富士山の自然を守るためには継続して取り組んでいくことが重要」と強調。景観改善に向けて、富士山の清掃活動や近年増えている外国人登山客への啓発活動に力を入れていく考えを示した。
富士山周辺の保全活動に取り組む任意団体「富士山アウトドアミュージアム」(富士河口湖町船津)代表の舟津宏昭さん(45)は「今後は詳細な巡礼路を明確にする研究を進めるなど、富士山の文化的価値を高める取り組みにさらに力を入れる必要がある」と話していた。
政府が2018年11月に提出した報告書では、景観の改善や富士山の文化的価値の情報発信を明記。ユネスコ側が求めた登山者対策では「望ましい水準」を、吉田口登山道で1日当たり4千人と設定し、水準を超える日を3日以下とする目標を盛り込んだ。
県などは混雑が予想される日をまとめたカレンダーを配るなどの対策を進めたが、18年の夏山シーズンに水準を超えた日は週末やお盆休み期間など6日に上り、17年よりも1日増加。世界に約束した登山者の集中緩和に向けた取り組みは道半ばの状況にある。
富士吉田市の堀内茂市長は「観光ツアー会社などを通じて混雑緩和を呼び掛けてきたが、限界はある。地元として今後もしっかりと保全に取り組んでいく」とし、入山規制など強制力を持った対策も検討する必要性を訴えた。その上で「諮問機関に活動が認められたことはありがたい。富士山は世界の宝。後世に引き継いでいかなければならない」と決意を語った。
広告