2019.8.06

【富士山臨時支局】溶岩の「壁」よぎる不安 

ルポ・痕跡残る石積み崩落

崩落現場を歩く登山客

崩落現場を歩く登山客

 石積みの大規模な崩落が発生した、富士山頂にある久須志神社付近の登山道。復旧工事が行われたが、通行止め解除は山開き後にずれ込むなど今夏の登山に影響が出た。3日早朝、生々しい爪痕を残す現場を歩いた。

 「さわるな Don’t touch」。板にマジックで書かれた注意書き。「立入禁止」「頭上注意」といった看板もあちこちに立てられている。

 登山道脇には直径50~60センチほどの溶岩が山積みに。大半が山頂から広げられた樹脂製ネットで覆われ、登山道沿い十数メートルにわたって高さ数メートルの「壁」を形作っている。目前に迫った山頂に到達する喜びより、崩れるのではないか、との不安と「早く通り抜けたい」という恐怖感が勝る。

 「長雨で地盤が緩くなっているんじゃないか。また崩落が起きないかと思うと怖い」。初めての富士登山に臨んだ東京都武蔵村山市の自営業男性(71)は、積み上げられた溶岩を見ながら不安そうに話した。

 崩落は昨年10月の台風24号による強風が原因とみられる。現場は吉田口、須走口両登山道が合流した山頂直下の登山道。積まれていた溶岩などが幅約10メートルにわたり崩れ、登山道を覆った。県は雪解け後の今年6月末に復旧工事に着手したが、7月1日の山開きには間に合わず、8合5勺から上は9日昼すぎまで通行止めとなった。

 登山道は山頂に近づくにつれ狭くなっていた。登山客を連れたガイドの一人は「横2列では登れない場所もあり、前の人を無理に追い越そうとすれば事故が起きかねない。安全を確保するため、かなり注意を払っている」と話した。

 崩落について報道で知っていたという京都府向日市の会社員女性(39)は「復旧は思った以上に進んでいた」と話す一方、「決して安心して登れる状況ではない。5合目で山頂の状況を周知してくれると心構えもできるのに」と話した。

 県などは、本格的な復旧工事を9月の閉山後に行うことにしている。3度目の登頂を果たした東京都福生市の会社員男性(61)は「いつもより登山客が少ないようで寂しい。早く本復旧すれば客足も戻るのではないか」と話した。

(2019年8月4日付 山梨日日新聞掲載)

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