2019.8.29

弾む石、渋滞の列に

目撃者「声出す間もなく」

 富士山の斜面を弾むように落ちた石は、渋滞で足止めされた登山者を直撃した。「一瞬の出来事。気が付いたら女性が倒れていた」。落石当時、山頂付近にいた登山者は声を震わせた。

 落石事故当時、山頂付近にいた登山者の話を総合すると、吉田口登山道は午前5時1分の日の出時刻前に山頂を目指す登山者で渋滞ができ、8合目付近から数珠つなぎのような状態だった。山頂にたどり着けず、登山道から御来光を見ようとする人もいた。霧で視界が悪く、強い風も吹いていたという。

 「ドンと何かが爆発したような大きな音がした。驚いて振り返ったら女性が倒れていた」。石がぶつかった女性のすぐ前方を歩いていた石川県の20代男性は当時の様子をそう振り返る。

 この男性と一緒に登山していた姉は石が斜面を転がる様子を目撃。「ぱらぱらと音がして顔を上げたら、石が落ちてきた」。上半身に直撃を受けた女性は、弾かれるように倒れ込んだ。当時を「声を出す時間もなかった」と語った。

 女性はその後、周囲の登山者が上着やバッグなどで作った即席の担架で山頂まで運ばれた。搬送を手伝った男性は「みんなが声を掛け続けていたが、意識がもうろうとしているようでぐったりとしていた」と話す。

 落石の後、登山道は手当てや搬送に当たる人の動きや声で騒然とした。当時、山頂にいたという30代の女性看護師は「下から『看護師はいませんか』と尋ねる声が聞こえ、急いで下りた。手当てをしたかったが、器具もなく、見守ることしかできなかった」と唇をかんだ。

(2019年8月27日付 山梨日日新聞掲載)

広告
月別
年別