2019.10.24

登山鉄道、ユネスコ報告を

富士山学術委、県に慎重対応求める

 世界文化遺産の富士山の保全策などを探る山梨、静岡両県の学術委員会(委員長・遠山敦子元文科相)が21日、東京都内で開かれ、山梨県が進める富士山登山鉄道構想の検討状況について意見を交わした。委員からは、検討過程の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会への報告など適切な手続きを求める意見が出た。遠山委員長は「富士山は山梨県だけのものではない」として県に慎重な対応を求めた。

 学術委では山梨県の担当者が、富士山登山鉄道構想検討会(会長・御手洗冨士夫経団連名誉会長)で2020年12月までに基本構想をまとめて公表する日程などを示した。

 学術委員は「世界遺産条例では世界遺産委に最終決定権があり、大きな計画がある場合は後戻りできる段階での報告がルールとなっている」と指摘。今夏の世界遺産委員会で20年12月までに保全状況報告書を再提出するよう求められたことを踏まえ「(登山鉄道検討の)報告のタイミングによっては保全状況報告書にも影響が出る。余裕を持った対応が必要」との声が出た。

 遠山委員長は「大変重要な指摘だ。富士山は山梨県だけのものではなく日本国民、いまや世界の山であり、よく注意して山梨県でやっているから良いということではない」と指摘した。

 学術委ではこのほか、再提出する保全状況報告書について詳細な資料は作成せず簡単な報告書とすることを了承。文化庁に開発規制対策案や最新の保全状況に関する情報提供を行うとした。合わせて次回を最後の保全状況報告書提出とすることを世界遺産委と確認したことが報告された。

 また、15~19年の5年で見直すとした、吉田口で1日4千人を超える日を3日以下にするなどの「望ましい富士登山の在り方」の指標、水準は次期(20~24年)も継続。著しい混雑の解消を図ることを当面の重点目標とすることとし、混雑予想カレンダーの周知、混雑情報の動画など情報発信を強化することとした。

(2019年10月22日付 山梨日日新聞掲載)

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