2019.10.27

富士山入山料義務化、議論を再開へ

山梨、静岡が有識者会合

 山梨、静岡両県は25日、開始から6年となった富士山登山者から千円を集める富士山保全協力金(入山料)制度の見直しに向けた検討に本格着手する。現在は任意としている入山料を、強制徴収に切り替えることの可否が主な論点。両県の調査では、登山者の8割以上が公平性を重視して支払い義務化を支持する一方、登山道以外の場所から登る人も含めて全員から徴収するのは難しいのが実情だ。制度の検証を担う有識者による専門委員会が、どのような結論を導き出すかに注目が集まる。

 制度の検証は昨年10月、2014年の本格導入から5年が経過したことを踏まえ、両県や地元関係者でつくる富士山世界文化遺産協議会作業部会で決定。作業部会に設けた有識者による専門委員会で話し合うことになった。

 専門委は世界遺産や観光、法律分野の学識経験者や富士山に関わるNPO関係者ら13人で構成。19年度は専門委の一部メンバーによる会合を都内で3回開き、将来、協力金を義務化する場合の手法、現在は千円の協力金の金額引き上げの可能性などの論点を整理した。富士山の公衆トイレのチップを協力金に含めた場合の課題も協議したという。

 25日に都内で開かれる専門委で論点整理の状況を報告し、本格的な議論に入る。

 協力金を巡っては、制度設計をした13年の専門委では任意で集める方式で意見集約し、「将来的には強制徴収も視野に入れる」との意見を付けた。両県は強制力を持たない「協力金」としつつ、「対象者全員からの協力を目指す」というスタンスで14年から制度をスタートさせた。

 山梨県世界遺産富士山課によると、吉田口登山道の協力率は14~19年で52.9%~68.0%。両県が18年に富士登山者を対象に行ったアンケートでは、強制徴収を求める回答が82.5%に達し、現行制度を支持する意見は17.5%にとどまった。ある県関係者は「支払った人の不公平感は解消されていない」とみる。

 ただ、富士山は登山道以外にも多数の場所から登山できるため、全員から徴収するのは困難で、強制徴収の実施はハードルが高い。

 協力金は富士山の環境保全や登山者の安全対策などの費用に充てられているが、多額の公費も投入。税負担による登山環境整備の在り方も検討材料となっている。

 同課によると、専門委で検討した内容は作業部会で意見を集約し、富士山世界文化遺産協議会で最終決定するという。担当者は「期限は設けずに、制度の在り方を検証していく」としている。

(2019年10月25日付 山梨日日新聞掲載)

広告
月別
年別