忠霊塔の桜守ろう
富士山の眺望スポット樹勢衰え 回復費用ネットで募る
富士山と五重塔(忠霊塔)、桜が競演する人気スポットとして知られる富士吉田市の新倉山浅間公園で、ソメイヨシノの樹勢の衰えが進んでいる。650本以上ある木の大部分は植樹から半世紀以上が経過し、幹に空洞ができたり葉が枯れたりする事例が増加。放置すれば枯れてしまう可能性があるといい、市は5年計画で樹勢回復に向けた取り組みを進めている。現在、作業に必要な資金をクラウドファンディングで募っており、市担当者は「桜は日本を代表する景観を構成する大事な要素。後世に残せるよう取り組んでいく」と話している。
市道路公園課などによると、新倉山浅間公園は長く住民の憩いの場として親しまれていたが、外国人観光客が富士山と忠霊塔の景色を会員制交流サイト(SNS)に投稿すると、2010年ごろから「日本らしい風景」として人気スポットに。ソメイヨシノが見頃を迎える4月中旬は特に多くの人でにぎわい、18年度には約47万人が訪れた。
公園には650本以上のソメイヨシノが植えてある。このうち約500本は1965年ごろから徐々に植樹し、約150本は2007年に植えた。ソメイヨシノの寿命は50~60年とされ、幹に空洞がある木や枝葉の量が少ない木のほか、幹に傷やカビが付いた木が目立つようになった。
このため、市は18年にソメイヨシノの「樹勢回復計画」を策定。公益財団法人日本花の会(東京)の協力を受けながら、剪定や肥料やり、土壌改良、土砂の流出防止などの対策を講じている。
市は忠霊塔近くの81本から優先的に取り組んでいるが、「予算には限りがある」(同課担当者)として、ふるさと納税制度を活用したクラウドファンディングで資金を募ることにした。返礼品として吉田のうどんや富士吉田市の水を使った炭酸水、地ビールなどを用意し、インターネット上で寄付を募っている。
年内に1500万円を集めるのが目標。今月4日から呼び掛けを始め、24日までに目標の半額を超える約770万円が集まった。市ふるさと納税推進室の担当者は「予想以上の反応。あらためて日本を代表する景色としての認知度があることを実感した」と話す。
市は集まった資金を活用して木の植え替えや土壌改良などを進める予定で、市道路公園課の担当者は「計画は日本を代表する景観を後世に残していくためのスタートと位置づけている。協力に感謝しながらしっかりと取り組んでいきたい」と話している。
(2019年10月25日付 山梨日日新聞掲載)