路面電車、最優位を承認
県有識者検討会、全会一致で
山梨県は6日、東京都内で有識者らによる「富士山登山鉄道構想検討会」(会長・御手洗冨士夫経団連名誉会長)の総会を開き、富士山有料道路(富士スバルライン)上に次世代型路面電車(LRT)を敷設することが「最も優位性が高い」とした骨子を全会一致で承認した。今後、地元の自治体や住民に整備の必要性を説明していくという。
骨子ではLRTやケーブルカーなど五つの交通システムを比較し、評価。普通鉄道やラックレール式鉄道の場合、富士スバルラインをそのまま利用できて土地改変や森林伐採が抑えられるが、緊急車両が通行できなくなる欠点がある。緊急車両が軌道上を通ることができるLRTの敷設が、最も優位性が高いと結論付けた。
このほか、ケーブルカーやロープウエーも検討。1~3合目付近から5合目までを直線的に結び、スラッシュ雪崩(雪代)の多発区域を回避できるが、支柱の建設や工事用道路の開設で土地改変が必要で、景観に大きく影響するため適さないとした。
電動バスや燃料電池バスなどクリーンエネルギーを利用したバスは「下山時に過充電が起きると想定され、ブレーキ性能に不安が生じる」(県)として、技術的観点から比較・評価対象から外した。
総会には御手洗会長、顧問をはじめ理事ら30人が出席。県担当者が中間報告として骨子を説明し、採決の結果、全会一致で承認した。
長崎幸太郎知事は総会後の取材に、「これまでは全く定義がない中でのイメージのぶつけ合いだった。議論を本格化させる段階にようやく入れた」と説明。「地元との対話が一番重要な部分なので、しっかり時間をかけてやりたい」と話している。
県は今後、骨子について地元自治体や観光関係者から説明していく予定で、県全域で説明会を開くなどして意見交換していく考え。住民の理解が得られれば、県は鉄道を導入するかを最終判断する。
富士山登山鉄道構想の検討は、長崎知事が知事選で掲げた公約。県は5合目の来訪者数のコントロール、車の排ガスなど環境負荷の抜本的な軽減、観光資源としての魅力の創出などの観点で登山鉄道が有効としている。
(2020年2月7日付 山梨日日新聞掲載)