2020.2.09

富士山鉄道に“ブレーキ”

世界遺産学術委が構想検証へ

 山梨県が進める富士山登山鉄道構想に、世界文化遺産の専門家が「ブレーキ」-。東京都内で6日開かれた富士山世界文化遺産学術委員会では鉄道敷設への慎重意見が続出した。学術委員の目には登山鉄道の議論が拙速に映ったためで、世界遺産としての価値を守る観点から小委員会で考え方をまとめる方針。同じ日に都内で開かれた構想の検討会では骨子に“お墨付き”が付けられ、長崎幸太郎知事は地元協議に入る考えだ。学術委から富士山の保全と活用に関するスタンスを問われた格好で、県に重い課題が突き付けられた。
 
 「どうしてこんなもの(富士山登山鉄道)が必要なのか。必要性が分からない人がほとんどだ」
 学術委の委員の一人は、富士山有料道路(富士スバルライン)上への次世代型路面電車(LRT)敷設が「最も優位性が高い」とする登山鉄道構想の議論に異を唱え、「もう造るという印象だ。観光誘致、観光開発のために鉄道を敷くようなもので納得できない」と厳しい言葉を続けた。

■プロの指摘
 「世界遺産としての『信仰の対象』『芸術の源泉』という普遍的価値を守ることを含め、考えていかなければならない」「鉄道の終点の5合目全体をどのような形にするのかを考える必要がある」-。慎重意見が相次ぎ、遠山敦子委員長が「根本的にこの問題(登山鉄道)に取り組むべきというのが全員の一致する意見だ」と引き取り、小委員会の設置を決めた。
 学術委は2013年の富士山の世界文化遺産登録に当たり、山梨、静岡両県による富士山の普遍的な価値を証明する取り組みに、専門的見地から支援。遠山委員長は12年から5年間、NPO法人富士山世界遺産国民会議の理事長を務めた。世界文化遺産のプロフェッショナルからの指摘に、県の担当者は「厳しい意見を受けることはある程度覚悟していた」と受け止めた。

■普遍的価値
 長崎知事は検討会総会の後、報道陣に「まだ何も決まっていない段階で、学術委に何を話したらいいのか。『こういうものでどうでしょうか』という形ができて、意見交換が始まる」と構想の検討手順について説明。学術委にも「予備的な情報提供はしていく」としつつも、まずはこれまでの想定通り、構想の骨子を基に地元との協議に入る考えは崩していない。
 遠山委員長はこう強調する。「検討プロセスでは学術委の意見をしっかり聞いてもらわなければならない。普遍的価値を守るという両県の役割を果たす上で大事なことだ」。地元との協議に加え、県には学術委の理解を得られるだけの構想をまとめるという“宿題”も課された。

(2020年2月7日付 山梨日日新聞掲載)

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