2020.2.16

富士山転倒、8割は下山中

登山経験2年未満、スニーカーや運動靴 県科学研究所が実態調査

「富士登山者には靴底がすり減っていない登山靴を履いてほしい」と話す宇野忠主任研究員=富士吉田・県富士山科学研究所

「富士登山者には靴底がすり減っていない登山靴を履いてほしい」と話す宇野忠主任研究員=富士吉田・県富士山科学研究所

 富士登山中の転倒者の多くは登山経験が2年未満、本格的な登山靴を履いていないケースも多い-。県富士山科学研究所の宇野忠主任研究員らが昨夏実施した調査から、こんな実態が分かった。転倒者のうち、下山中に転んだ登山者が8割以上だった。

 調査は2019年8月3、4、22日の3日間、富士山5合目の吉田口登山道泉ケ滝周辺で実施。山頂などから下山してきた719人に富士登山中の転倒の有無、年齢、性別、登山経験などを聞き、記入不備などを除く529人(男性351人、女性178人)の回答を統計解析した。

 転倒者は196人(37%)で、内訳は男性117人、女性79人。転倒の延べ回数は640回で、10回以上転倒したと答えた登山者もいた。2年以上の登山経験があると答えたのは53人、2年未満は143人だった。

 転倒のタイミングは「下山中」が538回と84%。理由は「足を滑らせた」が154人(67%)で最多。けがは、すり傷やねんざなどだった。

 スニーカーや運動靴で登山した場合、転倒が41人、転倒しなかったのが29人。ハイキングシューズでは転倒57人、転倒していないが95人。本格的な登山靴を着用した場合も97人が転倒していたが、205人は転倒していなかった。

 靴底がすり減っていない人は92人が転倒したのに対し、201人は転倒していなかった。「ほどほどに減っている」「かなり減っている」を合わせた転倒者は101人で、転倒しなかったのは127人だった。

 解析結果を受け、宇野主任研究員は「富士登山の際にはしっかりとした登山靴を履いてほしい。靴底がすり減っていないかチェックすることも大切だ」と話している。調査は18年度から日本人を対象に実施しており、今後は外国人を対象に行うことも検討しているという。

 宇野主任研究員らは2月29日、甲府・県立図書館で開く研究成果発表会で、調査結果を掲示発表する。このほか富士北麓地域を訪れる観光客の周遊行動をテーマにした口頭発表などもある。入場無料。問い合わせは県富士山科学研究所、電話0555(72)6206。

(2020年2月14日付 山梨日日新聞掲載)

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