2020.4.22

山小屋「3密回避は困難」

富士山、限られたスペースに寝泊まり
予約保留、営業中止も

 新型コロナウイルス感染拡大を受け、富士山の山小屋関係者が夏山シーズンを前に頭を悩ませている。限られたスペースに登山客が宿泊する山小屋は密閉、密集、密接の「3密」の状況になりやすいとされ、「対策に限界がある」として営業を見合わせる山小屋も。一方、全国に拡大された緊急事態宣言に伴う外出自粛要請が解除されるめどが立たず、複数の施設が宿泊予約の受け付けをストップ。関係者からは「準備を進めたいが、先行きが見えない」と嘆きの声も相次いでいる。

 「宿泊客が感染するリスクをゼロにすることはできない」。新型コロナウイルス感染拡大を受け、今シーズンの営業を取りやめることを決めた理由について、本8合目トモエ館と7合目トモエ館の担当者はこう説明する。

 山小屋関係者によると、山小屋では近年、少人数のグループで利用できる個室を整備する施設が増えているが、隣の人と肩がぶつかるほど密着して雑魚寝するケースもあり、「3密」を避けることが難しいという。標高の高い場所で発症した場合、麓の病院まで搬送する時間がかかるという課題もある。

 本8合目トモエ館と7合目トモエ館は当初、一度に受け入れる人数を定員より減らすことを検討したが、「3密」の解消が難しいと判断したという。営業を手伝うアルバイトの予定も考慮し、早めに営業中止を決めた。

 8合目の山小屋の担当者は「施設内の消毒を徹底し、宿泊人数を減らすなどの対応は考えているが、限界はある。終息しなければ営業はできない」と悩ましげ。別の山小屋の担当者は「受け入れ人数の制限も考えているが、悪天候の日に予約がない客の受け入れを拒むことは、登山者の命を預かる山小屋としてはできない」と話す。

 「外出自粛がいつまで続くか分からない。今年、登山に訪れる人がどれほどいるだろうか」。富士山吉田口旅館組合の中村修組合長は不安を打ち明ける。例年、4月中に運営する山小屋の予約の受け付けを始めるが、今年は問い合わせがあっても保留しているという。8合目の山小屋も「感染リスクがある中、人が来るかも分からず、営業できるかどうか決めかねている」(担当者)として、受け付けを見合わせている。

 富士吉田市のまとめでは、昨年の夏山シーズンには18万5807人の登山者が訪れ、外国人の姿も多く見られた。ただ、今年は各国からの入国に事実上の制限が掛けられ、山小屋関係者は「外出自粛や入国制限が解除されなければ、客足に影響するだろう」と懸念する。

 例年は山開きを控えた6月ごろから、冬季の雪氷で損傷した山小屋の修理や食料品の荷揚げなどの準備が本格化する。中村組合長は「営業できなければ、死活問題。山開きの時期までに終息していればいいが、まったく予想できない」と話した。

(2020年4月20日付 山梨日日新聞掲載)

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