2020.5.03

富士登山、今夏は困難

山梨側の山小屋全て休業 「吉田口閉鎖に課題」

昨年の富士山吉田口登山道で、山頂を目指す登山者。今年は登山道の閉鎖を求める声が出ている(昨年8月3日撮影)

昨年の富士山吉田口登山道で、山頂を目指す登山者。今年は登山道の閉鎖を求める声が出ている(昨年8月3日撮影)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、富士山吉田口登山道沿いの山小屋などでつくる組合と富士吉田市は30日、県に対し、夏山シーズンに登山道を閉鎖するよう求める方針を決めた。吉田口は全16軒の山小屋が休業を決め、「登山者の安全を確保することが困難」と県に判断を求める構え。県の対応が焦点となるが、関係法令では感染症対策を理由に登山道を閉鎖できず、検討は難航も予想される。富士山登山は富士北麓地域の夏観光の核で、麓の観光業者からは「非常に痛手」と悲鳴が上がる。

 「救護所や山小屋がオープンしていない中で登山道が開放された場合、登山者をサポートできない。登山の自粛を要請しても多くの人が入山することが予想される」。富士吉田市の担当者は登山道閉鎖を求める理由を説明した。

 堀内茂市長と富士山吉田口旅館組合の中村修組合長らが5月1日、登山道を管理する県に閉鎖を申し入れる。これに先立ち、組合は30日、加盟する山小屋16軒の夏山シーズン(7月1日~9月10日)の休業を決めた。中村組合長は「登山者や従業員が感染したら、大変なことになる。経営面では厳しくなり苦渋の決断だが、仕方がない」と話す。

 市などによると、限られたスペースに登山客が宿泊する山小屋は密閉、密集、密接の「3密」の状況になりやすい。市が4月30日、組合に営業自粛を求めたことも踏まえ、対応を決めた。

 市も8合目で運営する救護所を開所しないことを決定。感染が疑われる登山者への対応などに限界があり、ボランティアで勤務する医師や看護師の確保も困難だという。

 県県土整備部によると、関係法令では県道の吉田口登山道を感染症対策のために通行を禁止できる規定はない。県は29日から富士山有料道路(富士スバルライン)を通行止めにしたが、路面の修復などを理由とした。県議の中からは「実質的な狙いは感染防止対策だった」と指摘する声もある。

 吉田口登山道閉鎖の要請を受けた場合の対応について、県県土整備部幹部は「現行の法律では難しい。要請を受けて関係機関と検討していく」と述べるにとどめた。

 富士北麓地域は感染拡大の影響で観光客が減少。富士河口湖町船津で飲食店を営む男性店主(46)は「4月の売り上げは例年の約3割。夏山の観光客も見込めず、先行きが一層不透明。経営への打撃は避けられない」と話した。4月中旬から臨時休業している、同町大石の土産品店の40代女性店長も「(登山道が閉鎖されれば)夏山シーズンの観光客も訪れないことになる。営業再開のめどが立たなくなった」と嘆いた。

(2020年5月1日付 山梨日日新聞掲載)

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