2020.6.01

富士山5合目観光「3密」の壁

富士スバルライン夏の再開焦点に 100万人来訪、マイカー規制中はバス移動

 富士山5合目と麓を結ぶ富士山有料道路(富士スバルライン)の閉鎖が6月中旬までの延長が決まったが、夏場の観光シーズンまで通行止めが延長されるかは、結論が先送りされた格好となった。5合目は夏の2カ月間で100万人以上が訪れる県内屈指の観光スポットで、観光業者は改めて早期開通を県に要望。一方、開通すれば5合目で人々が密集する状態が懸念され、7~9月のマイカー規制時にはバス車内での観光客の「3密」は避けられない。住民からは閉鎖の継続を求める声も聞かれた。

 「観光への影響は大きい。一日でも早く開通を」。県に早期開通を求める要望書を提出していた富士河口湖町観光連盟の山下茂理事長は危機感をあらわにした。

 連盟によると、町を訪れる観光客の半数近くが富士山観光が目的で、山下理事長は「6月もスバルラインでマイカー規制が実施される前に個人の観光客が多く訪れる。仮に2週間後の15日に開通するとしても、延長による打撃は非常に大きい」と話す。

 観光客が多く訪れる富士河口湖町船津にある飲食店「メキシカン酒場タコドール」では感染拡大後に客足が減り、現在は一日数組の来客にとどまる。担当者は「売り上げはかなり厳しい」と声を落とす。「6月以降は例年、富士山観光が目的の客が来店者の約3割を占める。夏場に5合目観光が期待できないとなると大きな痛手だ」と話した。

 県は29日、道路の補修工事などを理由に5月末までのスバルライン閉鎖を14日間程度延長する方針を発表。県は「工事が完了して安全が確認できれば、開通させる」とする。開通した場合7月10日~9月10日の間、マイカー規制を敷くことが決まっている。一方、吉田口登山道と静岡側の3登山道は夏山期間の閉鎖を決定した。

 県のまとめでは、2018年の7~8月に5合目に140万人以上が訪れた。例年は散策路や土産物店などでは人混みができ、マイカー規制期間には観光バスやシャトルバスに多くの人が乗車。5合目観光はさまざまな場面で「3密」の状況が生まれる。

 静岡県は富士宮、須走、御殿場の各登山口5合目に向かう県道を9月10日まで閉鎖すると決定した。

(2020年5月30日付 山梨日日新聞掲載)

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