富士観測所、運営ピンチ
夏山封鎖、賃料収入なし
富士山頂にある富士山特別地域気象観測所(旧富士山測候所)での研究が、今年は山梨、静岡両県の登山道封鎖などで不可能になり、観測所を運営するNPO法人が苦境に立たされている。毎年、研究者の利用料収入で運営しているが、研究活動の中止で資金確保のめどが立たない。NPO法人はホームページで寄付を募っている。
観測所を運営するのは、NPO法人「富士山測候所を活用する会」(東京)。観測所は標高3776メートルの最高点に立地し、気象庁の富士山測候所として常駐観測が行われていたが、2004年に無人化された。05年に専門家らがNPO法人を立ち上げ、07年から気象庁から施設を借り受けて運営している。
NPO法人によると、毎年7、8月に国内外から延べ400人以上の研究者が訪れるという。独立峰で円すい型の山頂の形状から、大気の流れを周囲の山などに左右されずに観測でき、大気化学の研究が盛ん。昨年は大気化学、高山病、永久凍土など42の研究が行われた。
今年は山梨側の吉田口登山道、静岡側の3登山道の封鎖を両県が決定。研究者が富士山頂に立ち入ることができず、今年は観測所を閉鎖する。NPO法人は施設の利用料で運営費をまかない、年間約2千万円の確保が困難に。観測所内の機器の維持管理に支障を来すほか、法人の存続に関わる事態となった場合は、観測所での研究が続行できなくなるという。
NPO法人はホームページで寄付を募っているほか、今後はクラウドファンディングで支援を呼び掛ける。法人事務局長で静岡県立大の鴨川仁特任准教授(大気電気学)は「富士山頂で研究や観測ができる貴重な場所。活動が途絶えないよう、支援を求めていきたい」と話している。
(2020年6月23日付 山梨日日新聞掲載)