2023.6.27

文化的価値見つめ直す 研究者ら歴史紹介

富士山の文化的価値について再考したシンポジウム=富士河口湖町中央公民館

 富士山の世界文化遺産登録10周年を記念したシンポジウム「富士を未来へつなぐ」(県考古学協会、富士河口湖町、町教委主催)が24日、同町中央公民館で開かれた。研究者らが登録から10年間の歩みを振り返り、富士山の文化的価値について再考した。〈田辺彩子〉

 同協会の新津健会長は基調講演で世界遺産登録までの活動や富士山の歴史を紹介。古代は「雪と火の山」として「神や仙人しか登ることができない、仰ぎ見る山」とされていたが、江戸時代になると富士講が盛んになり、修験者や庶民が登るようになったことなどを説明した。
 明治以降は女人禁止の撤廃などによって一般登山者が増加。観光登山が中心となる中でも「御来光を見て涙するなど神聖な感覚は強く、古代以来の富士山をあがめる心や自然への畏れは継続している」と語った。
 パネルディスカッションには新津会長のほか、昭和大富士山麓自然・生物研究所の馬場章さん、県埋蔵文化財センターの野代恵子さん、同協会の室伏徹事務局長、帝京大文化財研究所の櫛原功一さんが登壇。町教委の杉本悠樹さんがコーディネーターを務めた。
 6人は研究や文化的価値を継承する上での課題について意見交換。「開発工事の時に調査できる体制を整え、次代に引き継ぐことが必要だ」、「地域に伝わるデータをまとめ伝えることが富士山を守ることにつながる」などの声が上がった。約80人が聴講した。

(2023年6月25日付 山梨日日新聞掲載)

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