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富士山世界文化遺産・構成資産『北口本宮冨士浅間神社』

 山梨県富士吉田市。富士山を目指す富士講信者が御師の家を出発し、最初に参拝する神社。境内には吉田口登山道の起点となる登山門があり、かつては門をくぐって山頂に向かった。

 日本武尊が境内を富士山遥拝の地に定め、大鳥居が建てられたことに始まるとされる。文献上では、1480年には「冨士山大鳥居」が建立されていて、16世紀半ばには社殿が整っていた。

 東宮本殿(1561年、武田信玄が造営したと伝わる)と西宮本殿、現在の本殿の三つは国の重要文化財に指定されている。拝殿、幣殿は18世紀前半、富士講の指導者によって寄進された。2017年には八つの社殿が新たに重文に指定。

 木造では日本最大とされる現在の大鳥居は、2013年3月から60年に一度の改修工事。2014年4月完成。

 境内の60本以上ある巨樹の中で最大のものは、本殿前の「冨士太郎杉」。樹齢1000年以上、幹周8.2メートル、樹高30メートル。近くには「次郎杉」があり、ともに県内有数の巨樹でご神木となっている。

 このほか、幹周5.1メートルのイチョウ、幹周7.6メートル「夫婦檜(ひのき)」がある。夫婦檜は2本の木が根元でゆ着した合着木で、地上3メートル先で分離、12メートル先で、また合着している。

 冨士太郎杉は県指定の天然記念物第1号。次郎杉、イチョウ、夫婦檜は市指定の天然記念物。

 富士山御師に代々継承され、富士講祈願をする祈願者に代わって奉納してきた「太々神楽」。明治中期に一般崇敬者で組織する「神楽講」に受け継がれた。素朴で直線的な動きが特色。舞は榊、神巫、四方拝、猿田彦の神、鈿女の神、手力男の神、天照皇大神、綿津美の神、稲荷大神、片剣、両剣、蟇目の12座。囃子は横笛、締太鼓、大太鼓。

 富士山と干支の「申(さる)」には深いかかわりがある。申は富士山信仰において神の使いとされ、あがめられてきた。神社の例大祭「初申祭(はつざるさい)」は、それまで暗雲に覆われていた富士山が、第6代孝安天皇92年(紀元前301年)の庚申の年に、突然空が晴れ渡って姿を現したという伝説にちなみ、開かれるようになったといわれる。明治期までは旧暦4月最初の申の日に開かれていたが、現在は5月5日に開催される。神事では神職が祝詞を奏上し、御酒などを供えて五穀豊穣を祈願。境内では「太々神楽」の奉納や野点、弓道大会、露店の出店などのイベントも開かれる。

 富士吉田市教委は2022年8月、市文化財(有形文化財・彫刻)に北口本宮冨士浅間神社に伝わる「木造随神倚像」2体を指定。約500年前に作られた歴史と、堂々とした風格を評価。北口本宮冨士浅間神社に伝わる像で、現在は市歴史民俗博物館で保管。1520年に仏師民部法橋によって作られた青と赤の衣の2体で、高さは1メートル26。

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