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2019.3.04 所属カテゴリ: 山日紙面で見る富士山 / 3月 /

異常減水、深刻な影響 富士五湖地方 マリモがピンチ・山中湖

 昨年春ごろから続く富士五湖の異常減水は、湖畔の生活環境、自然環境の両面に深刻な影響を与えている。農業用水を確保していた南都留郡勝山村は、水位低下で揚水が不可能となり、20年ぶりに今年の稲作を断念した。マリモ生息地の南限とされる山中湖では、県の天然記念物となっている生息水域の3分の1が露出し、マリモがピンチに立たされている。水位回復のかぎとなる降水量も、1、2月合計で昨年同期の約半分にとどまり、水位は下がる一方で、影響はさらに広がりそうだ。

 県河川課などによると、現在の富士五湖の水位は、基準水位と比べ西湖が2.05メートル、河口湖が4.08メートル、本栖湖が2.38メートル、精進湖が2.42メートルも低い。山中湖も昨年同期に比べ0.7メートル低くなっている。降水量が少ないことが大きな原因で、河口湖測候所によると、昨年1年間の総雨量は1030.5ミリと平年の68%にすぎない。

 そのうち、山中湖では北岸のママの森の湖岸幅200メートル、沖合まで100メートルまでの一部が露出した。昭和33年に「マリモおよびその生息地」として湖の中で唯一、県の天然記念物に指定された場所だ。

 遠浅の水中には多くの球形マリモが生息し、生長課程で基礎となる藻(小石などに付着した芝状マリモ)が岸辺から湖底にかけて広く繁殖していた。

 ところが、水位低下に伴い岸辺がジリジリと後退、かつて芝状マリモが繁殖していた遠浅部の多くは浜辺になってしまった。この浜辺を車で走り回る観光客らの姿も見られ、このままでは荒れ放題になりそうだ。

 マリモ発見者で県文化財保護指導員の杉浦忠睦さんは「これ以上、減水すればマリモの生態系に影響が出る」と指摘、県と村教委は保護対策として、露出した浜辺への立ち入りを禁止する方針だ。(1)看板設置(2)ロープを張る-などの方法を検討している。 【当時の紙面から】

(1988年3月4日付 山梨日日新聞掲載)
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