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2018.11.19 所属カテゴリ: 山日紙面で見る富士山 / 11月 /

富士山環境保全へ憲章 山梨、静岡両県が共同制定 「国民運動」に展開

 山梨、静岡両県は18日、富士山の保全を広くアピールするための「富士山憲章」を制定し、東京都千代田区の東京国際フォーラムで制定記念式典を開いた。憲章は日本の象徴である富士山を美しい姿のまま後世に引き継いでいくことを基本理念とし、富士山の特性を表現した「前文」と基本的な取り組みを示した5項目の「行動規範」から成る。式典には天野建、石川嘉延両県知事らが出席、「憲章」を発表して富士山の環境保全の必要性を訴えた。両県は今後、協力して富士山保全のため「一億人委員会運動」と銘打って全国に呼び掛ける運動を展開するほか、「富士山憲章推進委員会(仮称)」を設置し、憲章の普及と啓発を図っていく。

 式典には、両県知事をはじめ、国や両県、関係市町村、観光団体関係者ら約400人が出席。天野知事が「憲章制定を契機に、富士山保全のための国民的な運動となる『富士山一億人運動』の名のもと、富士山を愛する全国の人たちの力を結集した環境保全のネットワークづくりを進めていきたい」とあいさつした。

 石川知事は「富士山の環境保全には地元の力だけでは限界があり、憲章が全国、全世界に定着するようアピールしていきたい」とあいさつ。また、真鍋賢二環境庁長官が「富士山を愛する両県の思いが大きな輪となり、国民的な富士山の環境保全意識の高揚となり21世紀につながることを期待したい」と述べた。

 憲章発表では、両知事がステージに並び、「前文」は女性が朗読。「行動規範」は地元の子供たちが読み上げている様子をスクリーンで紹介する形で披露した。発表後、両知事が握手し、両県連携による取り組みを誓った。

 また環境先進国のカナダと衛星で結んだ二元パネルディスカッションも行われ、パネリストは両知事と作家C・W・ニコルさん、女優星野知子さん、カナダ側ではカナダ国立公園管理スポークスマンらが務めた。カナダ側は「自然公園の環境保全のための入山者規制を行っている。当初は一部反発もあったが、全体としては理解してもらっている」と取り組みぶりを紹介。一方、石川知事が「入山規制は、日本の伝統、風習などの面から現状では難しいが、いずれはやるべき方策だと考えている」などと答えた。

 またカナダ側は「富士山は日本の象徴というよりも日本そのもの。今後各国の豊かさは、国民総生産ではなく環境保全が指標となる。憲章制定を第一歩として、環境保全へ有効な方法に取り組んでいってほしい」と激励した。

 「憲章」の制定は、昨年8月に天野、石川両知事が行った「富士山環境保全共同宣言」の中に盛り込まれた。両県は今年7月、両県の関係市長や県議、大学教授ら13人による憲章検討委員会を設置するなどして成案をまとめた。

 県などは今後、具体的な取り組みの一つとして「一億人委員会運動」を展開。ごみの持ち帰りや美化清掃、植林、伝統芸能の継承などのボランティア活動への参加を全国に呼び掛けていく。ボランティアの募集は、県が17日に開設したインターネットのホームページ「やまなしの環境」などを使って行い、来年4月から募集を始める。

行動規範
●富士山の自然を学び、親しみ、豊かな恵みに感謝しよう。
●富士山の美しい自然を大切に守り、豊かな文化を育もう。
●富士山の自然環境への負荷を減らし、人との共生を図ろう。
●富士山の環境保全のために、一人ひとりが積極的に行動しよう。
●富士山の自然、景観、歴史・文化を後世に末長く継承しよう。
【当時の紙面から】

(1998年11月19日付 山梨日日新聞掲載)
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