2021.1.21

養蚕と富士山、歴史紹介

富士河口湖、信仰誕生の背景解説

富士山信仰と養蚕の関わりなどを紹介している企画展=富士河口湖・県立富士山世界遺産センター

富士山信仰と養蚕の関わりなどを紹介している企画展=富士河口湖・県立富士山世界遺産センター

 富士河口湖町船津の県立富士山世界遺産センターは、企画展「富士山と養蚕」を開いている。富士北麓地域などで養蚕が盛んだった歴史や養蚕の豊作を祈る信仰が生まれた背景、富士山信仰との関わりなどを紹介している。

 センターによると、富士北麓地域は冷涼で農業に向かなかったことなどから、養蚕や絹織物産業が盛んになった。幕末から明治以降は蚕から取れる生糸が重要な輸出品として、日本の経済を支えた。

 蚕の飼育の良しあしが収入を左右することから養蚕豊作を祈る信仰が生まれたといい、企画展では養蚕が盛んだった甲府市右左口地区の住民らが、蚕の神がまつられているとされる茨城県つくば市の蚕影神社に供物を奉納したことを示す札を展示。西桂町の神社で配布された、ネズミから蚕を守るためにネコを描写した護符なども並ぶ。

 富士山にまつわる女神である木花開耶姫命が右手にクワ、左手に蚕を持った姿で描かれた掛け軸や護符の版木もあり、センターの担当者は「養蚕の神としても信仰の対象になっていたことを示している」と話す。

 明治以降、蚕がふ化する時期を調整するために使われた富士風穴や富岳風穴(いずれも富士河口湖町)の様子を描いた略図や絵はがきなどを展示。カイコの供養塔と富士講の石碑が並ぶ大月市内のお堂の様子や、富士信仰で養蚕が重要視された歴史も解説している。

 企画展は2月23日まで。1月26日は休館。午前9時~午後4時半。

(2021年1月19日付 山梨日日新聞掲載)

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