2021.4.04

〈ハザードマップ改定〉溶岩流 こんなに早く…

富士山噴火予測 災害拠点指定の都留市立病院 避難方策検討急ぐ

富士山噴火時のハザードマップ改定で、溶岩流の到達時間が早まった都留市。大月市や上野原市にも溶岩流が到達することが判明し、広域避難計画の早期改定が迫られている=山日YBSヘリ「ニュースカイ」(NEWSKY)から

富士山噴火時のハザードマップ改定で、溶岩流の到達時間が早まった都留市。大月市や上野原市にも溶岩流が到達することが判明し、広域避難計画の早期改定が迫られている=山日YBSヘリ「ニュースカイ」(NEWSKY)から

 改定された富士山噴火ハザードマップで、溶岩流が都留市街地まで数時間で到達する可能性が指摘された3月26日、市立病院関係者から驚きの声が上がった。市立病院は2月に災害拠点病院に指定されたばかり。関係者は「災害時は救急患者の受け入れを想定していたが、今後は避難する方策も検討しなければ」と話し、災害対策マニュアルの見直しを急ぐ。市内の障害者支援施設は避難先の選定に苦慮。富士北麓地域の首長からは「広域的な避難がスムーズにできるよう国の積極的な支援を求めたい」との声が上がった。

 「溶岩流が短時間で来ると聞いただけでショックだ。とにかく冷静に受け止め、いつでも噴火に対応できるよう準備を進めなければならない」。都留市立病院の清水真紀事務局長(54)は同日、こう話した。

 山梨、静岡、神奈川各県などでつくる協議会が昨年3月に公表した富士山噴火の被害を想定したハザードマップの中間報告で、従来の想定よりも10時間早い2時間程度で富士吉田市街地に溶岩流が達することが判明。富士吉田市立病院にも被害が及ぶ可能性があるとして、県は今年2月、都留市立病院を富士山噴火時に患者を24時間体制で受け入れる災害拠点病院に指定した経緯がある。

桂川沿いに立地する都留市立病院=都留市厚原

桂川沿いに立地する都留市立病院=都留市厚原

 ただ、26日に公表されたハザードマップの改定版では、都留市と西桂町の境に溶岩流が到達する最短の時間が改定前の8日~約40日以内から7時間半程度になり、大幅に短縮された。溶岩流が通るとされる桂川から約100メートルに位置する市立病院にも被害が及ぶ恐れがあり、清水事務局長は「入院患者をどうするかを含め、対応を考えないとならない」と強調。「病院の災害対策マニュアルは富士山噴火を想定していなかった。早急に見直したい」と話す。

 同市内で高齢者や障害者を受け入れる施設も危機感を募らせる。同市井倉で障害者の生活介護やB型就労支援などを行う障害者福祉サービス事業所「みとおし」では、富士山噴火時の避難計画を立てていない。利用者の支援計画などを担当する加藤邦弘さん(62)は「噴火した際にどう対応すればいいのか分からず、途方に暮れそう。施設の避難計画の参考にするためにも、行政には早急に計画づくりの参考になるような方針を示してほしい」と求めた。

 富士北麓の首長からは噴火対策に国の積極的な支援を求める声も。富士吉田市の堀内茂市長はハザードマップの改定版を受け、「噴火時は早い段階からの情報収集や速やかな避難、避難先の受け入れ体制整備などが不可欠だが、各市町村のみでは対策に限界がある。国には富士山へのセンサー設置などを通じ、噴火の予兆をできる限り早く把握してもらいたい。溶岩流などの到達時間を遅らせるための砂防整備なども要望する」と語った。

(2021年3月27日付 山梨日日新聞掲載)

広告
月別
年別