2021.11.30

「徒歩での避難 検討を」

富士山研 吉本研究員に聞く

 27日に行われた富士山噴火を想定した訓練を視察した富士山科学研究所の吉本充宏主幹研究員に、今回の訓練のポイントや課題などを聞いた。

 -訓練のポイントは。
 「ハザードマップ改定で噴石と火砕流、溶岩流の範囲が細かく示され、改めて避難の考え方が議論されている。『果たして地域の全員を避難させるべきか』がポイントになる。命を守ることを考えれば、被害範囲の外へ逃げられればよいので、遠くまで行く必要はない。想定被害範囲の住民を優先的に安全な避難所に逃げてもらえればよい。範囲の外の住民まで過剰に地域外へ避難させてしまうと、道路の渋滞を発生させるだけでなく、地域経済も停滞し、復旧復興も遅くなる。今後、策定する広域避難計画でもこの点が重要になってくる」

 -観光地の富士北麓地域で車を使った避難は難しい。
 「今回の訓練は数台の車両でも山中湖村への到着が想定より遅くなった。実際には車両台数はもっと多く、夏の観光シーズンであれば道路もさらに渋滞している。ただ、溶岩流の速さは歩く速度と同等のため、徒歩でも数十メートル想定被害範囲から離れれば命は守れる。再度、避難時の移動手段を検討する必要がある。また、観光客にも噴火時には理解や協力をしてもらうため、日頃から富士山噴火の可能性について自治体が情報を周知することも大切」

 -訓練の今後の課題は。
 「避難者を隣接の他市町村に受け入れてもらうことを意識し、県や自治体同士の連携をより強化していくことが重要だ。また、徒歩で避難した場合のルートや時間を検証する必要もある。避難訓練は住民の噴火に対する意識を醸成させるため継続し、失敗や課題を次に生かしてほしい」

(2021年11月28日付 山梨日日新聞掲載)

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