2022.5.30

訪日観光ようやく一歩

実証ツアー シンガポールから来県 北麓業者「全面解禁はいつ」

 6月10日の訪日外国人観光客受け入れ再開を前に、観光庁の訪日観光ツアー実証事業に参加しているシンガポールの旅行業者が27日、山梨県内入りした。参加者は富士北麓を巡り、現地の感染対策を評価する一方、煩雑な入国手続きなどに「厳しすぎる」との指摘もあった。新型コロナウイルス感染拡大前は県内に年200万人の外国人観光客が訪れており、観光業者からはインバウンド需要の回復に期待する声も。だがツアー客のみといった受け入れ条件などから「劇的な回復は期待できない」との見方も出ている。

 県内入りしたシンガポールの旅行会社の社員4人は同日、富士河口湖町の大石公園や河口湖音楽と森の美術館を訪問。河口湖畔を散策し、雲間から富士山が見えると歓声を上げ、スマートフォンのシャッターを切っていた。一行は町内の宿泊施設に泊まって富士五湖周辺を巡り、29日には甲府市を訪れる。

 観光庁の実証事業で、県内には27~31日に今回のシンガポールの一行を含む計7組25人が訪れ、富士北麓のほか、甲府市や笛吹市、甲州市など9市町村の観光地を巡る。観光庁はツアーを通じて、外国人観光客の受け入れ再開に向け、感染対策などのガイドラインを取りまとめる。

 訪日観光客の解禁は約2年ぶり。政府は再開に当たり、当面は旅程を管理しやすい添乗員同行のパッケージツアーに限定する。6月1日からは1日当たりの入国者数上限を1万人から2万人に倍増させる。

 外国人観光客の受け入れ再開に県内観光業者からは期待の声。河口湖音楽と森の美術館はコロナ前、年約30万人の来館者のうち3割程度を外国人観光客が占めていた。政府が受け入れ再開を表明して以降、外国人団体客の予約が入り始めたといい、堀内正一副支配人は「歓迎だ。英語や中国語表記の案内看板やパンフレットの作成を急ぎたい」と話した。

 一方、富士河口湖町観光連盟の山下茂代表理事は「入国者数に1日2万人の上限があり、ツアー客限定では高望みはできない」と指摘。「外国人観光客の多くを占めた中国からの人出が戻らなければ、経営的はプラスにはつながらないだろう」との見方を示す。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻なども海外旅行に影響を及ぼしかねないとし「インバウンド観光の回復には数年を要するのではないか」と語った。

(2022年5月28日付 山梨日日新聞掲載)

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