2022.8.11

富士講 4年ぶり登山

「先人の信仰 後世に」

 東京都江東区を本拠地にする富士講「舎す御水講」のメンバーが、4年ぶりに富士登山に挑んだ。新型コロナウイルスの影響などで登山を取りやめていたが、「先人から受け継いできた信仰の形を絶やしたくない」と臨んだ。

 江東区と講元の若沢靖浩さん(62)によると、舎す御水講が誕生したのは江戸時代後期。富士講中興の祖・食行身禄の直弟子とされる渋谷道玄坂の地主・吉田平左衛門が創始したという。

 富士講登山では、山頂の神社に参拝し、火口を1周する「お鉢巡り」をする。若沢さんも20歳ごろから富士登山を欠かさなかった。しかし、2019年は山頂付近で石積みが崩れ登山道をふさぐ事故が発生し、20、21年も新型コロナの感染拡大を踏まえ、3年連続で登山を断念。「今年も登らなかったら伝統が途絶える」と危機感を募らせ、富士登山を決断した。周囲に呼び掛け、初挑戦の人も含む21人が参加を希望した。

 7月31日から8月1日にかけ、富士山信仰の旅をした。多くのメンバーが頂上を目指した一方、参拝者がかつて歩いた御中道を巡った人も。メンバーたちは講社名を記した手ぬぐいを首から提げた。

 江戸時代に最盛期を迎えた富士山信仰は衰退の一途をたどっており、若沢さんは「都内では積極的に活動しているグループはほとんどいなくなった」と指摘する。「富士山に登るのは大変だと思う。ただ、100年以上続いてきた信仰を後世に伝えていきたい」。力強く語った。

(2022年8月9日付 山梨日日新聞掲載)

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