2023.8.10

富士山臨時支局 ルポ 8合目救護所“命のとりで”に 弾丸登山の怖さ実感

山小屋「太子館」に隣接する救護所。24時間体制で体調を崩した登山者の診察をしている=富士山8合目

 富士山8合目富士吉田救護所は、山小屋「太子館」に隣接し、低体温症や高山病など体調不良を訴えたり、けがをしたりした登山者の診察・応急処置を担う。日本で最も高い場所にある“命のとりで”を取材した。
 1日午後8時半ごろ、小雨が降る中、別の取材のため、富士山8合目の山小屋「太子館」前にいると、救護所がにわかに騒がしくなった。しばらくすると、山頂から病人を乗せたクローラーが到着した。毛布にくるまれた中年男性に看護師が駆け寄る。「大丈夫ですよ」。緊迫感が漂う中でも看護師は優しい口調で症状を聞き取っていた。
 看護師に聞くと、男性は低体温症の症状があり、山小屋に運び込まれたという。同日昼に5合目から単独で入山し、風雨の中を山頂まで「弾丸登山」したとみられる。体調は徐々に回復し、命に別条はなかったと聞いたが、無理な日程で登ることの怖さを体感した。
 救護所は2002年、「太子館」と山梨大、富士吉田市が共同で開設。医師と看護師が4人一組となり、2泊3日の交代制を敷き、24時間体制で診療に当たる。閉山する9月10日まで、計29班がボランティアで活動している。
 救護所の広さは約12平方メートルで、診察スペースと2台のベッドがある。ギプスや酸素ボンベ、自動体外式除細動器(AED)などを備えている。神奈川県鎌倉病院の医師は「一通りの応急処置ができる」と話す。
 利用者の8割以上が低体温症か高山病という。医師は「しっかりと計画を立て、無理のないペースで登ってほしい」と呼びかける。

(2023年8月9日付 山梨日日新聞掲載)

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