2024.1.16

シカ生息域、AIで把握 県富士山研 管理捕獲に活用

 山梨県富士山科学研究所は、定点カメラと人工知能(AI)を組み合わせ、野生動物の生息状況を観測する独自のシステムを考案した。富士北麓の森林では50台のカメラでニホンジカなどを撮影。AIの学習機能を使いシカの生息域を把握できることを確認した。県内全域で応用が可能で、効率的な管理捕獲と食害防止につながると見込む。
 システムの研究は2022年度から行ってきた。研究所によると、富士吉田市や鳴沢、山中湖両村などの計50地点に、野生動物を撮影するためのカメラを設置。赤外線センサー付きで、シカをはじめクマやイノシシ、カモシカなど動物全般の動きを感知するという。撮影した大量の画像は随時、研究所のパソコンに送られる。
 撮影された画像は、AIを活用して整理。繰り返しの学習で判別の精度を高め、90%以上の確率でシカの画像だけを検出することに成功した。撮影された地点や個体数、性別などの情報を解析。その結果、雌は富士スバルライン周辺、雄は北富士演習場付近に比較的多く生息している状況などが分かった。
 解析データは随時、県猟友会に提供。実用化に向け、使い勝手などの意見を聞いているという。
 県によると、県内で推定されるシカの生息数は4万1885頭(22年度時点)。減少傾向とされるが、農作物への被害は続き、近年の被害面積は40~45ヘクタール、被害額は3千万円台で推移している。このほか、富士山では希少な高山植物の食害も目立ち、生態系への影響が懸念されている。
 研究所は、子どもを産む雌の管理捕獲を重点的に進めることで効率的な捕獲が可能になるとみている。県は30年度までに、シカの生息数を22年度より6割少ない1万7千頭に減らすことを目標に掲げており、研究所のシステムを参考にしたい考えだ。

(2024年1月15日付 山梨日日新聞掲載)

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