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インタビュー

10年前より厳しい審査 火山の「価値証明」カギ

富士山世界文化遺産登録県学術委員長 清雲俊元さん

 -世界遺産登録のハードルが年々高くなっていると言われるが。

 10年前に比べ遺産候補の普遍的価値の審査はとても厳しくなっている。その点では昨年11月、海外の専門家であるクリスティーナ・カメロンさんとノーラ・ミッチェルさんの2人と意見交換できた意義は大きい。富士山の価値証明について、文化的側面からだけでなく自然美からのアプローチの可能性も指摘してくれ、登録作業の奥深さをあらためて認識した。今後、アドバイスに沿って研究していかなければならないと考えている。

 -富士山の価値証明をどう進めるか。

 「信仰の対象」「文化創造の源泉」という観点で富士山の価値を証明することについては、カメロンさんたちも評価してくれている。ただ、もう1つの「火山」としての価値は分かりにくかったようだ。火山というと、自然遺産を目指すように聞こえるかもしれないが、富士山が火山だからこそ人は恐れ、信仰も生まれたことを考えれば重要な要素となる。ただ証明方法は学術委員会で相当練らなければならないだろう。

 -構成資産候補の保存管理計画策定や国文化財の指定作業は時間がかかりそうだ。県が目標とする2011年度の登録実現は可能か。

 富士五湖が構成資産候補に入る見通しが立ったばかり。保存管理計画策定や国文化財指定作業もこれから、という資産候補も多く、目標達成は非常に大変な状況だ。ただ目標をあまり先に設定してしまうと、作業自体が進まなくなる可能性もあるため、3年後の登録実現というのはよい目標だと思っている。いずれにしても先に行くほど登録は難しくなることが予想されるので、早めに作業は進めなければならないと考えている。

 

清雲 俊元(きよくも・しゅんげん)さん 富士山世界文化遺産登録県学術委員会委員長や県文化財審議会長を務める。甲州市塩山藤木の放光寺長老。73歳。

(2009年1月1日付 山梨日日新聞掲載)
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