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コロナ禍 変わる登山

 新型コロナウイルス禍、富士登山の形が様変わりしている。これまでは大人数のグループで山頂を目指すスタイルが主流だったが、密回避のため少人数化が進み、1合目から植生や史跡を見ながら、ゆったり登るツアーが人気に。一方、静岡県側では2022年度以降、効率的に体調をチェックできる顔認証システムの導入を検討。2022年夏山シーズンもウィズコロナ時代の登山を模索するシーズンになりそうだ。

 吉田口登山道のガイドが登録する富士吉田市案内人組合によると、2021年は旅行業者を通じた団体予約は例年の3分の1に減少。案内するグループは例年の20人から10人ほどに減った。そのため隊列が間延びせず、他の登山者に割り込まれる可能性が減ったほか、ガイドが一人一人の体調などに気を配りやすくなり、安全性は高まったという。

 山頂直下の急登は例年、御来光を見ようとする登山客で長い列ができ、追い越そうと登山道を外れる登山者もいた。昨年は登山者数自体が減ったことから渋滞はほとんど起きなかった。時間に余裕を持って焦らずに山頂を目指すことができ、落石事故や渋滞による登山者同士のトラブルの懸念も少なくなった。

 また、吉田口登山道の1合目下「馬返し」(標高1450メートル)地点を出発点に、「富士スバルライン5合目」(標高2305メートル)までのコースの登山者も増えているという。5合目から山頂を目指すコースと異なり、ゆったりと豊かな植生や富士山信仰に由来する史跡を見ながら歩くことができる。

 エコツアーガイドを実施する「富士山登山学校ごうりき」(富士吉田市)の近藤光一さんによると、普段は海外旅行などに行っている富裕層から注目が集まっている。富士山の歴史や自然への好奇心を満たすための高付加価値のツアーが求められていることに加え、ツアーの前後に地元で長期で宿泊する客が多く、「地域への経済的貢献度も高い」という。

 一方、静岡県は昨年11月、富士山登山者の新型コロナウイルスワクチン接種歴や健康状態を、顔認証システムで確認する実証実験を開始した。入山時に健康状態をチェックする手続きをスムーズにし、感染拡大を防ぎながら観光振興を図る。実験データから実用性を検証し、2022年度以降に静岡県側登山口への本格導入を検討している。

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