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2020.3.05 所属カテゴリ: ふじさんクエスト / 文化・芸術 /

令和の富士、今と未来語る [5]

【登山者協力金】長崎知事・受益者応分の負担を 川勝知事・強制なら使途明確に

 -登山者から任意で集めている富士山保全協力金を支払った人の割合(協力率)が昨年夏、山梨県は制度を導入した2014年に次ぐ高さ、静岡県は最も高くなりました。協力金への見解を伺います。
 長崎知事 協力率の向上は関係者の努力に加え、登山者の意識の高まりによるものだが、まだ7割弱にとどまっている。協力金は安全対策などに活用しているが、議論が出ているのは登山道の落石対策の充実。莫大な費用がかかり、この点については受益者が負担するのが重要だ。
 川勝知事 制度を導入する際、(強制徴収を意味する)入山料とするかどうかが話し合われたが、任意の協力金という形で落ち着き、現在に至っている。ただ、協力金を使って公衆トイレの設置など登山者のための整備を進めているが足りず、公費を投入しているのが実情だ。

 -制度を巡っては、19年10月に有識者による専門委員会で強制徴収に切り替える議論が始まりました。(今年2月に協力金義務化で合意)。考えを聞かせてください。
 長崎知事 富士山に登らない納税者には、なんで山に登る人のために税金を使うのかという意見もある。登山者の安全確保のためにやることなので、応分の受益者負担があってしかるべきだ。実効性が難しいから強制化をしなくていいという議論にはならない。実効性を高める努力をすべきで、議論の在り方として方向が逆だ。
 川勝知事 強制徴収となる際には、(現状千円としている)協力金の金額も議論になるだろう。強制徴収や金額はオープンに議論していくことが大事。決まった後も、使い道を明確にしてしっかりと説明できるようにしていかなければ、登山者の理解は得られない。

 -閉山期間中である昨年10月、インターネットで富士山登山の様子を動画配信していたとみられる男性が滑落し、亡くなる事故がありました。富士山の冬季登山をどのように考えていますか。
 長崎知事 できれば冬山登山はやめてほしい。山梨県では救助を要した事故の多くが夏山期間外の遭難事故。冬山は安全確保が困難な上、捜索の二次遭難のリスクもある。プロ中のプロのような人もいるので、冬山を閉鎖するかどうかは専門的な議論になる。安易な気持ちで登山しないように、エキスパートの世界にしておくことが正しいのではないか。
 川勝知事 閉山期間中の富士登山は危険で、遭難時は救助者の危険も高まるため原則は禁止だ。ただ冬山の訓練が必要なケースもあり、絶対に登山してはいけないとまでは言えない。冬の富士山を登るならば自己責任という側面が強くなることを忘れてはならない。山梨県は登山届の提出を義務化する条例を制定して取り組みが先行している。静岡県としても一体化できるよう進めたい。

 (おわり)

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