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勧告が突き付けた「宿題」

登山客抑制、開発対策どうする

 イコモスによる富士山の世界遺産登録勧告は、登録に当たっての課題を突き付けている。増加が見込まれる登山客の抑制、富士五湖周辺など山麓地域の開発の拡大をどう防ぐか…。2016年までに、構成資産の保全状況をまとめた報告書をユネスコ世界遺産センターに提出するよう要請した。その中身と現状を点検する。

 構成資産の吉田口登山道は毎年、夏山シーズンだけで20万人を超える登山客が集中する。江戸時代に富士講信者が利用した登山道だが、イコモスは「斜面の流出などの問題を引き起こしているように見える」と問題視し、登山者数の管理戦略の策定を求めた。土砂流出を防ぐ砂防ダムなどの公共工事も「神聖なる山岳に負の影響を与える可能性がある」と再検討を求めた。このほか、富士五湖や御師住宅など生活エリアに近い構成資産周辺では、開発が進んで景観を損ねることを懸念。三保松原を除く24の構成資産が広範囲に点在していることから、来訪者に対する情報提供戦略をまとめるよう求めた。

 山梨、静岡両県は登山者から入山料を徴収し、入山規制につなげる方向で一致。地元関係者の同意を条件に今夏の試行、来夏の本格実施を目指している。横内正明知事は1日、「同意があれば入山料徴収を実施するという考え方に変わりはない。登山者の増加対策はしっかり検討しなければならない」と決意を語った。

 開発抑制を求められたことについては、「既に自然公園法の網に掛け、各市町村で景観条例を作ったので、景観は守られる。規制の強化ではなく、乱開発が起こらない対応を今後3年間で検討する」と述べた。

(2013年5月2日付 山梨日日新聞掲載)
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