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2021.2.13 所属カテゴリ: ふじさんクエスト / 文化・芸術 /

富士山から創作の活力

 映画やドラマなどの映像に音楽を付ける映像音楽作曲家で、演奏家としても活躍する世武裕子さん(38)が富士北麓地域に移住した。自然豊かな富士山の麓での生活に「この地域からの富士山が最も好き。ポジティブな楽曲が生まれそうで、しばらくは山梨を拠点に活動したい」と話している。

 「せりふと音楽のテンポを合わせることが大事」「どの登場人物の目線で映像を見てほしいのかを意識して」。昨年12月下旬、富士吉田市内のゲストハウスで開かれた教室。世武さんは自身が音楽を担当した映画を題材に、映像音楽作曲家を目指す若者たちに作曲のポイントを指導した。

 「良い映画音楽は映像を見ていて気にならないが、悪い音楽はすぐにつまらないと言われる。それがつらさだが、楽しさ、やりがいでもある」。世武さんの言葉に若者たちは熱心に耳を傾けていた。

◎ミスチルの編曲
 世武さんは滋賀県出身。3歳からピアノを習ったが、当時からオリジナルの曲を弾いていたといい、「決められた教材の曲を何度も弾くのが面白くなかったのかもしれない」と笑顔で振り返る。

 小学校に入学する頃にはプロの作曲家になると決めていた。日本語ではない言語、日本ではない風景の中で繰り広げられる洋画が好きで、劇中曲のクオリティーにも魅了された。理想とする海外音楽を学ぼうと進学先はパリ・エコールノルマル音楽院映画音楽学科を選んだ。

 卒業後の2011年、映画「家族X」で映像音楽作曲家としてデビュー。その後は映画「日日是好日」「生きてるだけで、愛。」、ドラマ「恋仲」「好きな人がいること」、ユニクロやNTTドコモ、JRA(日本中央競馬会)などのCM音楽なども手掛けてきた。人気バンド「Mr.Children」などの編曲も担当、個人としても楽曲を発表するなど幅広く活動する。

 音楽を付ける際には「登場人物をいかに魅力的に見えるかを意識し、彩りや奥行きが出るように心掛けている」と語る。そのため、普段から、出会った相手がどのような人物かを見極める癖がついているという。

◎コロナ禍が契機
 昨年、渡米しようと考えていたが、新型コロナウイルスの感染拡大で計画を変更。仕事の拠点としていた東京でも感染者が相次いでいたことから、富士山の眺望の良さや夏の冷涼な気候に引かれていた富士北麓地域に移住することを決めた。

 「東京都心から近く、レコーディングなどで都内のスタジオに行くにも便利。空気や水もきれいで、気に入っている。ここで暮らす自分を好きと感じる気持ちが作品にも影響すると思う」。しばらくは富士北麓地域を拠点に生活するという。

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