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2021.11.24 所属カテゴリ: 山日紙面で見る富士山 / 11月 /

富士山の絵を一堂に 富士吉田市

すでに14点購入 美術館の建設も検討中

 富士吉田市はこのほど、富士山を描いた有名画家の作品十四点を購入した。日本画の重鎮故川合玉堂の掛け軸をはじめ日本画、油絵、版画と多様で、総額は千二百万円だった。同市は将来、富士山に関する作品を一堂に集めた美術館建設構想を持っており、今回の購入作品はその第一弾。既に同市にゆかりが深い増田誠画伯に作品を依頼したほか、横山大観、葛飾北斎といった数千万円クラスの作品を物色中といわれ、富士山のふもとという条件を生かしたユニークな美術館を目指している。

 今回、同市が購入したのは川合画伯をはじめ山元桜月、小室翠雲、近藤浩一路、西山英雄、川崎春彦、村山径、国府克、田所浩、野上魏、松本哲男、桝田隆一の日本画、鶴田吾郎の油絵、斉藤清の版画で合わせて十四点。

 いずれも富士山を題材としたもので、川合画伯の作品は掛け軸の「富士」(二尺12号)。川合画伯は文化勲章受章者で、その作品「ゆく春」は重要文化財にもなっている。山元画伯は富士山に打ち込んだ画家。十四画伯とも画壇で名を成した人たちばかりだ。

 作品はF10号から30号の大きさで、各画伯が独自の手法を駆使し、四季、早朝から夕暮れといった折々の富士山を表現している。同市は既に南部陽一郎、小野洋両画伯の作品を購入しており、富士山をテーマにした所蔵作品は十六点になった。

 同市は六十四年までの長期計画のなかで、同市上吉田の郷土資料館周辺を歴史、文化、産業の知的レクリエーションゾーンとする構想で準備を進めている。このなかに芸術館(仮称)を建設するが、同市はここを「富士山美術館」として“目玉”にしたい考えだ。

 問題は美術館の収蔵品だか、同市は年次計画で作品購入を進めており、本年度は三千万円を予算化した。現在、残る予算で一千万円クラスの作品を購入する予定だ。

 さらに同市は、美術館のネームバリューを高めるため横山大観、葛飾北斎、梅原龍三郎らの作品を物色中といわれる。しかし、これらの作品は少なく見積もっても一点数千万円といわれ、織物不況で景気沈滞ムードの市民からは「無駄遣い」との批判もある。

 同市は十日から三日間、富士急文化会館でこれら所蔵品と地元画家の作品展を開き、市民に紹介した。市教委は「身近で名画に触れられるというのは貴重なことだ。北ろくの文化向上にも役立つ。“ミレー美術館”と並ぶ、ユニークな美術館にしたい」と話している。 【当時の紙面から】

(1982年11月24日付 山梨日日新聞掲載)
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