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富士山を世界文化遺産に

山梨県知事 横内 正明

 富士山は、雄大さ、気高さ、美しさを基盤に、さまざまな信仰や芸術を生み出した山として、世界に二つとない普遍的な価値を持っています。登山そのものに意義を見いだす「登拝」という信仰形態を持ち、頂上付近でのご来光を目指して一歩一歩登り詰める文化的伝統が現代まで継承されていること、葛飾北斎の浮世絵など、富士山を題材とした芸術作品の影響が、国内のみならず、はるか遠くの西欧にまで及んでいることなど、富士山は、国内外に類例を見ない、まさに「世界の宝」にふさわしい「名山」です。

 山梨・静岡両県では、富士山が一日も早く世界文化遺産として登録されますよう、平成17年度から取り組みを進めて参ったところであり、本年1月、国からユネスコに対して正式に推薦書が提出され、審査の舞台はいよいよ世界へと移り、登録に向けた手続きの歩を大きく進めることができました。これも、関係する数多くの皆さまのご理解とご尽力の賜であり、改めまして心から敬意と感謝の意を表する次第です。

 本年夏から秋ごろには、ユネスコの諮問機関イコモス(国際記念物遺跡会議)の調査員による現地調査が控えており、その結果は来年の6月から開催される、ユネスコの世界遺産委員会の審議に大きな影響を与えることとなります。

 このため、現在、国や静岡県などと連携を図りながら、富士山の価値や保存管理の状況などについて十分な理解と評価が得られるよう、資料の内容や説明方法などについて、検討を進めております。また、構成資産周辺の環境整備を進めるため、県や市町村のみならず、地元住民や各種団体の皆さまによる、清掃活動などの熱心な取り組みをいただいており、その結果、大いに改善がなされています。引き続きこうした入念な準備を進めながら、対応に万全を期して参りたいと考えております。

 これからの1年間は、登録の実現に至る総仕上げの期間となります。本年2月23日に開催された「富士山の日」の条例制定記念式典におきましては、官民一体となって富士山の世界文化遺産登録に向けて県民運動・国民運動を盛り上げていく、「富士山世界文化遺産 両県県民会議」が発足し、現在、山梨・静岡の両県合わせて3500を超える団体・企業にご加入をいただいております。このような多くの皆さまのお力をお借りしながら、「日本の宝」富士山を「世界の宝」とするべく、国や静岡県、関係市町村などと連携を密にして精一杯取り組んで参ります。

 県民の皆さんにおかれましても、今後とも格段のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

(2012年7月1日付 山梨日日新聞掲載)
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