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2021.5.01 所属カテゴリ: 富士山噴火に備える / 防災キーワード /

富士山噴火総合対策

 2021年3月の富士山噴火のハザードマップ改定を踏まえ、山梨県は噴火災害に対する総合対策をまとめた。ソフト、ハード両面で事前に実施する取り組みとともに、緊急で行う対策を示した。

【ソフト対策】広域避難計画改定へ

 ソフト対策では、平時に広域避難計画を改定するほか、富士山の観測強化や調査研究、研究人材の育成、関係機関との連携強化などに取り組む。噴火直前・噴火後には避難の実行や噴火状況の把握、情報提供、避難路の確保に向けた連携などの対策をとる。

 想定する火山現象は溶岩流、火砕流、融雪型火山泥流、大きな噴石、降灰、降灰後の土石流。火山現象の全てやそれぞれの現象に対して、「平時」「噴火直前・噴火後」に分けて国や県、市町村が取り組む対策を明記した。

 平時にはハザードマップ改定を踏まえ、県や関係自治体でつくる富士山火山防災対策協議会が広域避難計画を改定する。県は住民の避難行動を定める市町村の避難行動計画の策定を支援する。

 噴火の予測精度の向上を図るため、国や県が連携して観測網の拡充を図る。県は噴火履歴や火山活動に関する調査研究を進め、成果を地元自治体などに還元することで、地域の防災力強化につなげることとした。

 火山現象や避難方法の普及啓発にも努める。県が市町村と連携し、ハザードマップの見直しに伴う溶岩流、火砕流、融雪型火山泥流のシミュレーション結果などを住民らに説明する。溶岩流のシミュレーション動画を活用するほか、動画を県のホームページで公開。県は火山防災を担う行政職員や研究者の採用も進める。

 このほか、医療体制整備や避難に支援が必要な高齢者、観光客らへの避難対策を検討。避難時間を短縮するため、避難誘導を担う「防災リーダー」の育成にも取り組み、避難訓練を実施する。

 噴火直前・噴火後には県が現地対策拠点を確保し、情報収集や情報伝達などを実施する。噴火の前兆現象が確認できた場合は、県の防災ヘリ「あかふじ」や県警ヘリ「はやて」を使い、被災状況の映像を送信する。

 避難対策としては、住民や観光客、登山客、外国人に対し、多言語に対応した手段で避難を呼び掛ける。福祉施設入所者らに対する避難先、移動手段の確保も支援。災害拠点病院と連携し、医療措置を取るほか、避難路の確保も進める。降灰対策では降灰の範囲や降灰量の分布を予測し、関係機関に情報を提供することとした。

【ハード対策】砂防えん堤、導流堤整備

 ハード対策では、溶岩流や火砕流などの火山現象の到達時間を少しでも遅らせるため、砂防えん堤や導流堤の整備などを進める。

 溶岩流、火砕流、融雪型火山泥流、降灰、大きな噴石、降灰後土石流を想定。「平時」「噴火直前・噴火後」に段階を分けて対策を実施する。

 平時の対策は国や県の取り組みを記した。国は火山現象を監視、観測機器の整備を進めるほか、砂防えん堤など砂防設備や避難路、輸送路を整備。県は混雑が予想される避難路について、交通の円滑化に向けた通行方法を検討する。

 降灰対策では、リニア中央新幹線の軌道上に防音・防災フードを設置。県が登山者の身を守るためのヘルメット、防じんマスクなどを配備することも盛り込んだ。

 噴火直前・噴火後の対策では、国と県、市町村が実施する対策を明記。国は火口位置がある程度特定できた段階で、作業員の安全を確保した上で、砂防えん堤から石を取り除く作業を実施する。砂防えん堤がない場合は仮設えん堤や導流堤などを緊急的に設置する。このほか、県や市町村が円滑に避難するための避難車両確保に取り組むこととしている。

【対策拠点】大石地区(富士河口湖)が「最適」

 富士山噴火時に最前線で対策に当たる現地対策拠点。山梨県は富士河口湖町大石地区への設置が最適とする報告書をまとめた。

 現地対策拠点を巡っては、県が富士吉田合同庁舎に設けることを想定。ただ昨年3月に公表された富士山噴火ハザードマップの中間報告で、2時間程度で被災する可能性があることが示されたことを受け、見直しを決めた。防災の専門家らでつくる有識者会議で設置場所を検討してきた。

 富士河口湖町大石地区は陸路で甲府市内とのアクセスができることや、富士山の様子が観察できることが利点。火山灰の影響を受ける可能性は「富士山の東側の地域に比べて低い」という。

 大規模な溶岩流が発生した場合は対策拠点が被災する可能性があるものの、大石地区に溶岩流が到達するまでに数日かかるとして「対策を実施するために必要な時間の確保は可能」と評価した。

 現地対策拠点には1220平方メートルの規模が必要。関係機関が個別に活動できるスペースなどを設ける。用意しておく設備として非常用電源、通信回線、机やプリンターなどの機材を挙げた。拠点の設置方法には「新設」「既存施設を改修して利用」「既存施設を利用」の3パターンを提示。県は今後、設置方法などを検討する。

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