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県世界遺産推進課 高木昭課長に聞く

新たな規制強化ない

 富士山世界文化遺産登録に向けて、県が新たに想定する湖などの規制範囲の考え方について、県世界遺産推進課の高木昭課長に聞いた。

 -世界遺産の構成資産になると規制が強化されるのか。

 「世界遺産は既存の法令による規制範囲内で保護していくことになる。新たな規制強化はなく、既にある法令で認められた行為が制限されることはない」

 -国の文化財に指定されると新たな規制が加わることはないのか。

 「新たに文化財に指定されても、これまでの規制内容を上回る規制が加わることはない。ただし、許認可手続きにおける書類の提出先が増えることはある。また、すべての行為に許認可が必要となるのではなく、文化財の価値に影響しない行為、例えば既存法令で認められている発電などについては、許認可が不要な行為として保存管理計画に明記する」

 -ユネスコやイコモスの指摘による規制はないのか。

 「国も含めて、世界遺産としての保護は既存法令の範囲で可能と考えている。登録後にユネスコから厳しい指摘を受けることは考えにくい」

 -構成資産になっても、湖での漁業や釣り、富士山ろくでの林業など、これまでの法令で認められていた行為はできるか。

 「既存法令で認められている行為ができなくなることは基本的にない」

 -世界遺産登録や文化財指定に伴って、湖に設置している桟橋などの構造物の許認可の取り扱いが変わることはあるのか。

 「河川法による管理は基本的に変わらない」

 -恩賜林が構成資産になると、これまでと管理の方法などが変わることはないのか。

 「世界遺産になっても管理方法などに変更はない」

 -富士山ろくの県有林で行われているキノコの栽培や財産区でも行われている樹木の伐採は引き続きできるのか。

 「世界遺産登録によって既存の法令などで許認可を受けて行われている行為が制限されたり、できなくなったりすることはない」

 -本栖湖から富士山への眺望景観は価値が高く、登録範囲に含まれることになった。その景観を保全してきた森林の伐採が世界遺産登録によってできなくなったり、制限されることはないのか。

 「現在行われている伐採も、自然公園法や森林法に基づく森林計画に定められたルールを順守して行われている。県では世界遺産登録範囲の価値を保護するためのルールとして、既存の法令が適切かどうかのシミュレーションを行っている。現時点では十分な保護措置が講じられていると判断しており、現在認められている規模や内容の伐採であれば、世界遺産登録後も引き続き行うことができる」

 -世界遺産登録されると観光客の増加が見込まれ、禁止されている植物や鉱物の違法な採集が行われることはないか。

 「観光客の増加により、禁じられている行為が行われる可能性はある。こうした行為には既存の法令を周知するとともに、パトロールを行うなど資産の保護管理体制を充実させていくことが必要。地域住民のかかわりも重要になる。違法行為については今後も法令に基づいて適正に対応していく」

(2010年6月16日付 山梨日日新聞掲載)
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