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2023.4.11 所属カテゴリ: ふじさんクエスト / 自然 /

富士五湖の魚

 山梨県水産技術センターによる富士五湖の放流の振り出しをみると、山中湖への放流は利根川産のコイが最も古く1800年代。1919年に霞ケ浦産のワカサギ、27年桑名(三重)産、28年瀬田(滋賀)産のシジミが記録されている。河口湖は15年の甲府からのコイに始まり、16年相模川産のアユ、17年霞ヶ浦産のワカサギ、20、30年代にヒメマス、ニジマス、カワマスの放流が続いた。西湖は1700年代末期に諏訪湖からコイ、ナマズ、1916年にはヒメマス、アユが移入された。精進湖、本栖湖は17年に十和田湖(青森)産のヒメマスをそろって放流した。

 漁業をみると、山中湖はワカサギやフナ釣り、近年はルアー客によるオオクチバス(ブラックバス)釣りが盛ん。河口湖はニジマスや五湖の中で最も早く89年に釣りを認めたオオクチバスのルアー釣り(山中湖、西湖は94年)が主体。最近では、かつて国内有数の産地として知られたワカサギ釣りの復興に向けて、さまざまな取り組みを進めている。西湖の主要魚種はヒメマス、精進湖はフナ、本栖湖はヒメマス、オイカワで釣り客需要のすみ分けを図っている。

 5湖の主な魚をみると、ワカサギは色が銀白色で体長15センチ。毎年卵移入されるが、稚魚も含めてオオクチバス、ブルーギルのえさになっていると推測される。ヒメマスは頭、背が青緑色で背、尾びれに黒い小さな斑点がある。本栖湖、西湖に毎年放流される。両湖はヒメマス釣りが例年春と秋の2回解禁となる。オオクチバスは体長50センチ。名前の通り口が大きく下あごが突き出す。北米産で日本には1925年、芦ノ湖に移入された。魚食性が強いので持ち出し禁止となっていたが、ゲームフィッシングの流行によってゲリラ放流され、たちまち生息場所が広がった。

関連ワード「クニマス」

 2010年12月、国内唯一の生息地(秋田・田沢湖)で70年前に絶滅したとされ、環境省のレッドリストでも「絶滅」種に指定されている日本固有の淡水魚「クニマス」の生息が西湖で確認されことが、京都大の中坊徹次教授らの調査で判明。西湖では以前から、体が黒みかかったヒメマスに似た魚の存在は有名で、長く「クロマス」と呼ばれてきた。かつて田沢湖で絶滅する前に、西湖や本栖湖、滋賀県の養鱒(ようそん)場にクニマスの受精卵を送った記録があるという。

 山梨、秋田両県と仙北市の3者が2017年3月、クニマスの貸与に関する覚書を締結。山梨県水産技術センター忍野支所で飼育されているクニマスの成魚を秋田県に無償で貸し出す。これまでに2017年と2019年に計40匹、2021年に30匹を貸与。秋田県の田沢湖クニマス未来館(仙北市)や秋田県水産振興センター(北秋田市)で展示、飼育される。

 西湖におけるクニマスの2021年度推定生息数(1歳以上)が、過去最多の1万7030匹に上ることが2023年3月までに、山梨県水産技術センターの調査で判明。これまでに最も多かった2020年度の約1.4倍、調査を始めた2012年度の約2.2倍。

 センターによると、推定生息数は毎年秋を基準とし、試験採取の釣果や遺伝子解析などの情報を基に、寿命を6歳と仮定して算出。2021年度は2020年度の1万2087匹を4943匹(40.9%)上回り、過去最多を更新した。魚の年齢は1~3歳が過半数を占め、比較的若いという。

 センターは富士河口湖町の2018、2019両年の降水量が例年より多かった状況に着目。「湖底の湧き水と酸素量が増え、産卵が活発化したと考えられる」としている。クニマスの卵を捕食する外来のヨーロッパウナギの駆除活動が進んだほか、クニマスと餌を取り合うワカサギの放流量が10年ほど前からクニマス保全などのために制限されたことも影響したとみている。

 クニマスの推定生息数は2012年度は7863匹だったが、2013年度以降は右肩下がりで推移。ヨーロッパウナギによる食害などの影響もあり、2019年度は過去最少の730匹と推測された。しかし、2020年度は大幅に回復し、2019年度の17倍近くに増え、初めて1万匹を超えた。センターは「2020年度から特に降水量の増加による影響が大きく表れていて、21年度も同様の傾向が続いた」とみている。

関連ワード「レイクトラウト」

 山梨県が2022年12月、本栖湖で外来魚「レイクトラウト」の生息を初めて確認。生息域が制限される産業管理外来種に当たり、国内では栃木県の中禅寺湖のみで管理されてきた。山梨県は何者かが釣りを目的に放流したとみて、実態調査と駆除を開始。

 レイクトラウトはカナダやアメリカ北東部が原産のイワナの仲間。雑食で大きいものは1メートルを超す。県や本栖湖漁協によると、2022年11月、本栖湖を訪れた東京都内の男性が湖の中央付近で、レイクトラウト1匹をルアーで釣り上げた。連絡を受けた県水産技術センターの担当者らが確認したところ、体長81.3センチ、重さ5.6キロの産卵を終えたメスだったという。

 本栖湖には、ヒメマスやニジマス、ウグイなどが生息。本栖湖漁協によると、見つかったレイクトラウトの胃袋には、ヒメマスの成魚1匹が入っていた。

 漁業関係者らでつくる県内水面漁場管理委員会は食害を懸念し、駆除することを決定。釣り人に対し、本栖湖でのレイクトラウトの放流や釣った場合の持ち出し、再放流を禁止した。

 その後の山梨県水産技術センターの現地調査によると、2022年12月28日から2023年3月8日までに計6回、職員が湖に網を仕掛けたところ、1回当たり1~7匹の成魚を捕らえた。最も大きい個体は92.5センチ、最小は29.8センチで、平均は61.3センチだった。複数の個体の腹から他の魚が見つかったという。魚の種類は不明。個体ごとに体長が異なることから、センターは繁殖している可能性があるとみて、本格的な駆除活動や生態調査を進める方針。

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