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2021.9.11 所属カテゴリ: ふじさんクエスト / 気象 /

幻の富士六湖「赤池」は幻だった!?

 山梨県富士河口湖町精進では、台風などによる大雨の影響で精進湖が増水すると、幻の湖、通称「赤池」が出現することがある。精進湖の約1キロ東にあり、大きさは長軸約100メートル、短軸20-30メートル、深さ約7メートルで通常は枯渇している。

 新富士火山の噴火で「せの海」が分断され、現在の精進湖と西湖となった際に、地下の溶岩地帯の亀裂などを通じて精進湖とつながっているとの定説がある。精進湖には湖水の流出口がないため、水位が上がると地下水が赤池にも湧き出して水がたまると見られる。

 1980年以降では、1982、83、89、91、98年に出現。2004年10月には、秋雨前線と台風22号の影響により、国道139号の「瀬々波橋」南東側の森林くぼ地に現われ、同月14日には東西約50メートル、南北約20メートルの大きさになった。2011年9月には、台風12号と15号の影響により7年ぶりに出現。2020年7月には、梅雨の長雨により9年ぶりに姿を見せた。

 河口湖、山中湖、西湖、本栖湖、精進湖に続く「富士六湖」とも呼ばれ、出現時には地元住民や観光客の話題になる。

 2021年8月には2年連続で出現、中旬に降雨が続いた影響とみられる。2年連続の出現は1982、83年以来で38年ぶり。県富士山科学研究所によると、8月20日午後2時ごろの時点で水深は10~20センチ。県富士・東部建設事務所吉田支所によると、精進湖の水位は同日時点で8月の平均水位を1.68メートル上回る2.77メートル。

幻の富士六湖「赤池」 山梨県富士山科学研究所などが2021年9月、「赤池」が主に直近の降雨でできているとの研究結果を公表した。精進湖と地下でつながり、湖の水位上昇で赤池が出現するとされてきたが、精進湖と赤池の水質が異なることが判明し、定説が覆された。

 研究所のほか、山梨大大学院総合研究部と立正大地球環境科学部が共同で実施し、2020年7月に出現した赤池の水、精進湖の水を採取してそれぞれ分析した。

 分析結果によると、赤池の水について分子のわずかな質量の違いを示す「安定同位体比」を降雨の前と後で比較。降雨後に安定同位体比が大きく変化していることから、赤池の水が主に直近の降雨に由来するものと判明した。

 精進湖と赤池の水に含まれるカルシウムイオンや重炭酸イオンの量を比較したところ、赤池のイオンの量は精進湖の半分から3分の1程度と判明。精進湖の水とは明らかに異なるものだった。

 この結果を踏まえ、研究所は「雨水が地下深くに染み込まずに表層を通り、数日間かけて赤池に流れ込んでいる可能性が高い」としている。赤池は2021年8月にも出現、研究所が水を採取するなどさらなる分析を進めている。

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