1つ前のページに戻る

2023.4.29 所属カテゴリ: ふじさんクエスト / 自然 /

ラン科の多年草「幻の花」

 「クマガイソウ」はラン科の多年草。20~40センチほどの高さで、ピンクの斑点のあるかれんな白い袋状の花、濃い緑色の大きな葉を持つ。水はけの良い山地の日陰で育ち、すべての花が同じ方向を向くのが特徴。その花の形態が、「平家物語」に登場する武将熊谷直実が背負った母衣に似ていることが、名前の由来といわれている。花の寿命は約20日間。生育条件が厳しいため「幻の花」ともいわれ、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧2類に、山梨県のレッドデータブックで絶滅危惧1B類に指定されている。

 山梨県内では、富士北麓の西桂町にある倉見山が、全国でも有数のクマガイソウの群生地として知られている。同町によると、故池田正純さんが1970年にクマガイソウ5株を植え、丹誠込めて育ててきた。最盛期には約3万株が群生。数万株もの群生は全国でも珍しく、見ごろとなる5月には県内外から多くの人が訪れた。

 正純さんが亡くなった後は、妻のまささんが管理していたが、盗掘などにより2004年頃から激減。2006年には数千株にまで減少した。町では毎年5月上旬に開いていた「クマガイソウ祭り」を中止、翌年からは一般公開も休止とした。一方で町では、クマガイソウの保全・再生に乗り出した。土壌の改善から始め、2010年度からは、国の緊急雇用創出事業臨時交付金を活用。倉見森林管理組合に整備と管理を委託、周囲の草取りや木の伐採をはじめ、盗掘防止用のフェンスや観賞用の遊歩道を設置した。また、腐葉土と鶏ふんの散布や間引きを行い、株数の増加に向けた取り組みも進めた。

 その結果、2011年には1200株程度の保全の見通しがたったことから、監視員を置いての一般公開を再開した。2012年には、より多くの花が咲くようになったことから、前年の2倍の面積を公開した。保護、整備の成果が出始めている。現在は約5000株に回復。

2023年の実施概要

■公開期間
◇2023年4月27日(木)~5月15日(月)
※天候、生育状況により変更の場合あり

■公開時間
◇各日10:00~16:00

■公開会場
◇西桂町民グランド西側 [山梨県西桂町倉見488-1]

■入園料
◇無料

■アクセス
◇【電車】富士急行線三つ峠駅下車、徒歩約30分
◇【車】中央自動車道富士吉田西桂SICから国道139号経由
※駐車場は西桂町民グランド第2駐車場

■問い合わせ
◇西桂町役場 建設産業課 TEL : 0555-25-2121


 一方、山中湖村の花の都公園では2000年に50株のクマガイソウを植栽。その後約1000株にまで増えたことから、遊歩道を整備して、2004年から毎年5月中旬~下旬にクマガイソウ観察ツアーを実施。現在では約3000株が園内を彩る。

広告