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2019.8.01 所属カテゴリ: 富士山味グルメ / 地域グルメ /

鳴沢菜

 山梨県鳴沢村が原産とされ、富士北麓地域を中心に採種と栽培が繰り返されてきた鳴沢菜。その歴史は古く江戸時代までさかのぼると伝えられ、野沢菜や広島菜などと並ぶ、いわゆる「地菜」として地元で大切に育てられている。

 もともとはカブの仲間で、系統分化により生まれたといわれる。高さ60-80センチ前後。乾燥させれば保存用にもなった葉、漬け菜類の中では大きく甘味が強い根、ともに富士北麓の長く厳しい冬場の貯蔵野菜として活用されてきた。

 輸入品や野沢菜との交雑や、各農家が限られた集団の中で栽培を繰り返してきたため、近親交配の傾向が強まったことなどから、品質がが低下。市場への出荷量も減っていたが、行政や大学が連携して優良系統を選抜する研究に着手。2005年度、根が太く、葉がしゃきしゃきしているなど、本来の性質を持ち合わせた系統の育成に成功。今では村の特産としてPR、地域振興につなげている。

 鳴沢菜の収穫期は決まっていないが、漬物にする場合は夏に植えて冬に収穫するのが一般的。霜が2回ほど降りると葉のあくが抜けて甘くなるという。村内のほとんどの家が自家用に栽培。各家庭で漬物を漬け込む冬の光景は健在。

 野沢菜より小ぶりな葉は、味も濃厚でおいしい。主に漬物に使われるが、若菜のうちに間引いた葉は軟らかく、おひたしやみそ汁の具になる。昔は根も立派な食材に。切り干しにしたり、煮物にしたり…。何より、かみしめるほどじわりとにじむ甘さが子どもたちの貴重なおやつになったという。

 漬物はもとより、おやき、まんじゅう、すいとん、ほうとう、そば、まぜご飯、アイスクリームなど、さまざまな用途に利用されている。
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